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【社説】

熊本地震1年 輸送と配布は素早く

 震度7を二回も記録した熊本地震から一年。大規模災害で問題になるのが救援物資、義援物資の輸送と配布だ。熊本でも課題が残った。ITを活用し、被災者の手元に迅速に届くように準備したい。

 熊本地震では、政府調達の救援物資のうち、食料を日本通運が、生活用品などをヤマト運輸が担当。それぞれ九州にある物流センターに集めた後、被災市区町村の集積所に送った。物資はその後、約四百カ所の避難所に輸送された。これとは別に、民間企業や個人からの義援物資を積んだトラックも被災地に入った。

 集積所はトラックの列ができ、最高五時間待ち。集積所から避難所までは地元の運送会社も担当したが、輸送能力が不足した。避難所のニーズがネットで広がり、大量の物資が集まって混乱したこともあった。

 大規模災害では、情報を集めている間に状況が変わる。ITをうまく利用したい。

 アイデアはある。明星大学の天野徹教授がつくったシステムだ。避難所のニーズや発送された義援物資などをネット上の専用サイトで公開し、マッチングする。

 この二月、埼玉県であった協働型災害訓練でも使われた。操作はタブレット端末を使い、マッチングが終わったニーズと物資はサイトから消えるので混乱を防げる。

 天野教授は熊本地震の際、被災地の自治体に提案したが、利用されなかったという。事前に準備していないと、使いこなせない。

 提案がある。運輸業界の伝票にICタグを採用して選別作業などの効率化につなげてはどうか。

 ICタグは非接触ICカードと同じような仕組み。作業員と荷物が多少離れていても情報が読み取れる便利さがある。デジタル情報なので人工知能(AI)やネットとの相性が良い。価格は一枚十円程度。人手不足の業界にもメリットがあるはずだ。

 平時から使えば、いざという時でもスムーズに使える。

 災害発生時は、各社が持つ救援物資などの情報を天野教授考案のようなサイトに公開する。積み込んでいるトラックも分かるので、避難所に直接、輸送することもできる。国や自治体が備蓄物資を事前に登録しておけば、初動も早くなる。AIを使ったマッチングも可能だろう。

 方法はほかにもあるだろうが、支援物資の輸送と配布はスピードが大事だ。熊本地震の教訓を生かす知恵が求められている。

 

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