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【社説】

「共謀罪」審議 不安に思うのは当然だ

 「共謀罪」法案が衆院法務委員会で趣旨説明された。だが、創作者らの団体や人権団体、刑事法学者らのグループから強い反対論が出ている。どれも説得力があり、政府の言い分には納得できない。

 「対象をテロ集団、暴力団、薬物密売組織などの組織的犯罪集団に限定している。一般の方や正当な活動をしている団体が対象になることはない」(安倍晋三首相)

 「自然環境や景観の保護などを主張する団体は、結合関係の基礎が正当な目的にあるものと考えられ、組織的犯罪集団にあたることはなく、座り込みを計画したとしても処罰の対象となることはない」(金田勝年法相)

 一般の人が対象になることはないと念を押し、過去の国会に提出した共謀罪法案に比べて、厳格化しているといいたいのだろう。

 だが、そうだろうか。二〇〇五年の法務省刑事局長の国会答弁はこんなことを述べている。「はじめは正常なものから走りだした。しかし倒産みたいな形になり、詐欺するしかない。これはもう完全に詐欺集団として切り替わった。こういう認定はある」

 今国会でも、もともと正当な活動を行っていた団体であっても、目的が犯罪の実行に変化したと認められるときは組織的犯罪集団と認定できる−。十二年前の答弁と同じではないか。

 つまり、どんな団体でも犯罪集団に変質したと認定されうる。しかも、共謀罪に該当する罪は二百七十七もあるのだ。

 そもそも国連の国際組織犯罪防止条約で、新たに共謀罪を立法したのはノルウェーとブルガリアしかない。葛野尋之一橋大教授や高山佳奈子京大教授ら刑事法学者らは「ほとんどの締約国は条約の目的に沿った形で、自国の法制度に適合する法改正をしている」と指摘している。

 つまり、既遂を処罰する日本の原則にのっとって条約を締結すべきなのだ。共謀罪を導入すれば法制度が不適合を起こす。

 日本ペンクラブの会長である作家の浅田次郎氏は「人間には命があっていずれ死ぬが、法律は死なない。子や孫の代にこの法律がどう使われるか。今が大事なときだ」と述べた。

 「共謀罪」は計画と準備行為で罪に問える制度だ。準備行為といっても、乗車券を買ったり、現金自動預払機(ATM)からお金を引き出すなど日常的な行為も含まれ、ほとんど無限定である。市民が不安に思うのも当然であろう。

 

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