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【社説】

トルコ国民投票 欧米との関係は壊さず

 トルコの国民投票は大統領権限を大幅に強化する憲法改正案が民意を得た。地域大国のトルコは中東安定の要だ。そのためにもエルドアン大統領には欧米と建設的な関係を築くよう期待する。

 改憲案は首相職の廃止や大統領に閣僚の任免権を付与することなどが柱。議院内閣制から大統領制へ移行する国家体制の大転換となる。国家の安定と経済発展の実現には強いリーダーシップが不可欠だと主張するエルドアン氏が国民投票の旗を振った。

 イスラム色の強いエルドアン政権下での改憲によって、一九二三年の建国以来、国是としてきた世俗主義も転機を迎えたという歴史的意義も加わる。

 一方でトルコ内外には、国民投票の結果により独裁国家に変質しないかという懸念が深い。

 それでなくともエルドアン氏は、昨年七月のクーデター未遂事件後、独裁色を強めている。事件の首謀者とみなす宗教指導者ギュレン師に関係があるとして、公務員、軍人、警官、教員ら十数万人を追放し、批判的なメディアも沈黙させた。

 異論を強権で抑え込もうとすれば反発を招き、目標とする国家安定とは逆の結果になりかねない。

 トルコでは最近、クルド人勢力や過激派組織「イスラム国」(IS)とみられるテロが頻発。海外からの投資や観光に暗い影を落とし、経済は減速している。

 国民投票の賛否が僅差だったことを、エルドアン氏は肝に銘じてほしい。

 欧州とは国民投票に絡んで摩擦が高まった。エルドアン政権は欧州に暮らすトルコ系住民の支持集めに、閣僚を送り込んで集会を開こうとしたが、ドイツは集会を禁じ、オランダは閣僚の入国を拒否した。欧州各国がトルコ国内の対立を持ち込んでほしくないのは理解できる。

 米国とも在米のギュレン師の送還問題や、アサド政権と対峙(たいじ)するシリアのクルド人武装勢力の取り扱いで対立。トルコはシリア和平問題をめぐってロシアとイランに急接近した。

 欧州にとってトルコはシリア難民流入の防波堤であり、米国にとってはIS掃討作戦でのパートナーだ。北大西洋条約機構(NATO)の要所の加盟国でもある。

 トルコにしてもEUは最大の貿易相手であり、中東への米国の関与は歓迎すべきことだ。協力関係が相互利益につながることを双方が理解してほしい。

 

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