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【社説】

米の温暖化対策 時流に逆行する気か

 脱炭素社会の時流に本気で逆行するつもりか。トランプ米大統領が地球温暖化対策を全面的に見直し、温室効果ガスの排出規制を緩める命令を出した。これでは米国が世界から取り残されるだけだ。

 大統領令の狙いは斜陽の石炭産業の復興だ。米国の炭鉱労働者は二〇一五年で約六万六千人。五年前より約二万人減った。昨年は石炭採掘最大手のピーボディ・エナジー社が会社更生手続きの適用を申請して破産した。

 だが、大統領令で石炭産業が息を吹き返す見込みは薄い。衰退の主な要因は機械化に加え、石炭に代わり発電燃料の主役に躍り出た天然ガスの価格低下だからだ。

 石炭産業を抱える中西部はトランプ氏を大統領の座に押し上げた。規制緩和にはその支持をつなぎとめたい思惑の方がちらつく。

 脱炭素社会への移行機運に乗って、世界の主要機関投資家が化石燃料分野から投資を引き揚げる動き(ダイベストメント)が広がっている。

 米国でも屈指の財閥ロックフェラー家がかかわる基金ロックフェラー・ファミリー・ファンドは昨年、石油メジャーのエクソンモービルの株式売却をはじめ化石燃料関連投資をできるだけ早く打ち切ると発表した。

 このファンドは声明で、その理由を「国際社会が化石燃料使用削減に向かっている時に投資を続けるのは、資金的にも倫理的にも道理に合わない」と説明した。

 ロックフェラー家は石油事業で財を成した経緯があるだけに、大きな反響を呼んだ。

 トランプ氏が重視する国内雇用でも、急速に伸びているのが太陽光発電だ。非営利団体のソーラー財団によると、太陽光発電産業に従事する労働者は一六年に25%増えて二十六万人を超えた。

 米国は二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出量が中国に次いで二番目に多い。それだけ削減には大きな責任がある。

 ところが、トランプ政権の政策転換は温暖化対策の国際的枠組みであるパリ協定を骨抜きにしかねない。パリ協定は米中両国が主導してまとめたものだ。「米国第一主義」の身勝手ぶりが目に余る。

 日本は三〇年までに一三年度比で温室効果ガスを26%削減し、五〇年には80%削減する目標を掲げている。

 だが、歩みは遅い。政府は温暖化対策に本腰を入れるべきだし、米政権には再考を促してほしい。

 

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