東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 社説一覧 > 記事

ここから本文

【社説】

英国、総選挙へ 未練は断ち切れるのか

 欧州連合(EU)からの離脱を決めた英国で来月下院が解散され、六月八日に総選挙が実施される。EUへの未練を断つような世論をまとめ、離脱交渉を進めるきっかけにできるのだろうか。

 メイ首相は声明で、前倒し総選挙を決めたのは最近だとし、離脱交渉を進める政府と、批判する野党のどちらを支持するか、民意を問うためと説明した。下院も解散に同意した。

 総選挙で第一義的に問われるのは、離脱の進め方だ。首相は、移民規制のためなら欧州単一市場からの撤退も辞さない「強硬な離脱」の方針を打ち出し先月、正式に離脱を通告した。

 最大野党の労働党は、離脱には反対しないが、EUとの通商関係は維持したい「穏健な離脱」を主張する。

 しかし、争点は離脱の手法にはとどまらないだろう。

 野党第二党のスコットランド民族党は離脱そのものに反対し、強硬な離脱を進めるのなら、英国からのスコットランド独立を問う住民投票を実施する方針を表明している。少数野党も離脱に反対だ。

 昨年六月に実施された国民投票では、EU離脱派と反対派の差はわずかだった。「離脱すれば、EUに支払っている週三億五千万ポンド(約五百億円)もの拠出金を国営医療制度に充てられる」など、事実に基づかないキャンペーンも繰り広げられ、離脱決定後、後悔を表明する人も相次いだ。

 総選挙は、正確な事実に基づいてEUとの関係を考え直し、納得して交渉を進めるための絶好の機会になる。

 選挙で離脱についての世論が固まったら、EUとの協議を急ぎたい。残された交渉期間は二年を切った。EU側が求める多額の「手切れ金」を皮切りに法整備、貿易協定など詰めるべき難題は多い。EUとの取り決めのないまま、時間切れで無秩序に離脱するような事態になれば、経済的な混乱は世界に広がる。

 離脱決定への「後悔」があまりに大きいとの民意が示されれば、離脱の当否そのものを再考するシナリオもあり得るだろう。

 第一回投票が二十三日に迫るフランス大統領選や、秋のドイツ総選挙でも、反EUを訴える勢力が支持を広げている。戦後、欧州の平和と安定の礎となってきたEUだが、民意との乖離(かいり)や官僚主義など制度疲労も目立つ。英総選挙をEUを救う処方箋を考える機会にもしたい。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】

PR情報