東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 社説一覧 > 記事

ここから本文

【社説】

マクロン氏当選 ノンにも耳を傾けよ

 仏大統領選で親EUを掲げたマクロン氏の勝利は世界的な自国第一主義の流れに歯止めをかけ、ひとまずEUの安定につながろう。新大統領は「取り残された人々」の疑念の声に応える責務がある。

 「極右は嫌だが、銀行家(新自由主義)も嫌だ」−。街にあふれたスローガンは、今回の選挙の本質を物語るものだ。

 得票率だけみればマクロン氏の圧勝だが実情は異なる。ルペン氏の得票率34%は極右勢力として現体制六十年の歴史で最大だし、全候補者に「ノン」の意思表示である白票の多さも過去に例がない。マクロン氏勝利はやむを得ない「消極的選択」と評された。

 三十九歳のマクロン氏は高級官僚から投資銀行幹部に転じ、オランド政権では経済相を務めた。議員の経験は皆無で、自らの政治団体「アン・マルシュ(前進)」も昨年四月につくったばかりだ。

 「左派でも右派でもない」といい、社会政策こそ移民や難民に寛容なリベラル派だが、経済政策は規制緩和推進など保守と変わらぬ新自由主義者である。

 歴史人口学者のエマニュエル・トッド氏は「新自由主義者がナショナリズム(自国第一主義)を養っている」と批判していた。

 若者の四人に一人が失業など経済の低迷こそがフランスの最大課題だ。それは英国の欧州連合(EU)離脱やトランプ米大統領の誕生と同様、反グローバル経済や反自由貿易などの国民感情を生んだ。極右などポピュリズム勢力が伸長する土壌にもなった。

 しかし、そうした「取り残された人々」に対し、マクロン氏も、またEUも説得力のある手だてを示せていない。

 EUの統合深化を主張するならば、その先に国民はどんな恩恵が得られるのかをわかりやすく説かなければならない。

 ドイツとともにEUを引っ張ってきた中核国フランスで離脱派が勝てばEU崩壊の危機もささやかれた。この結果は、幾多の戦乱や侵略を経験した欧州人が平和の安定装置として築いたEUを守ろうと、安易に極右には勝たせない意志を示したといえよう。

 新大統領の最初の試練は六月の国民議会(下院)選挙である。ゼロからのスタートとなる「前進」が過半数を占めることができなければ、野党内閣との共存(コアビタシオン)を強いられ、難しい政権運営となる。

 分断状態の国民を結集させられるか、私たちも注目したい。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】

PR情報