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【社説】

首相の改憲発言 9条空文化は許されぬ

 真の狙いはどこにあるのか。安倍晋三首相が憲法九条を改正し、自衛隊の存在を認める条文を加えることに意欲を示したが、戦争放棄と戦力不保持の理念を空文化する改正なら、許してはならない。

 首相は日本国憲法施行七十年の節目に当たる三日、東京都内で開かれた憲法改正を訴える集会にビデオメッセージを寄せ、「二〇二〇年を、新しい憲法が施行される年にしたい」と表明した。

 改正項目に挙げたのは現行九条の一、二項を残しつつ、三項を設けて自衛隊の存在を明記すること、高等教育を含む教育無償化を規定することの二点である。

 九条に三項を加えるなどの「加憲」案は公明党がかつて理解を示していた主張。教育無償化は日本維新の会の改憲案に盛り込まれており、改憲実現に向けて両党の協力を得る狙いがあるのだろう。

 とはいえ、この内容からは憲法を改正しなければ対応できない切迫性は感じられない。

 政府は自衛隊について、憲法が保持を禁じる戦力には当たらず、合憲との立場を貫いてきた。

 首相は改正を要する理由に憲法学者らによる違憲論を挙げたが、ならば首相もそうした学者らと同様、自衛隊違憲の立場なのか。

 自衛隊の存在はすでに、広く国民に認められている。必要がないのに改正に前のめりになるのは、別の狙いがあるからだろうか。

 自衛隊の存在を明記するだけと言いながら、集団的自衛権の限定なしの行使を認めたり、武器使用の歯止めをなくすような条文を潜り込ませようとするのなら、断じて認められない。

 教育無償化も同様だ。無償化には賛成だが、憲法を改正しなくても、できることは多い。そもそも旧民主党政権が実現した高校授業料の無償化に反対し、所得制限を設けて無償化に背を向けたのは安倍自民党政権ではなかったか。ご都合主義にもほどがある。

 憲法は主権者たる国民が権力を律するためにある。改正は、必要性を指摘する声が国民から澎湃(ほうはい)と湧き上がることが前提のはずだ。

 首相の発言は国民の代表たる国会で進められている憲法審査会の議論にも水を差す。自民党総裁としての発言だとしても、首相に課せられた憲法尊重、擁護義務に反するのではないか。

 そもそも東京五輪が行われる二〇年と憲法改正は関係がない。内容は二の次で、自らの在任中の改正実現を優先するのなら「改憲ありき」の批判は免れまい。

 

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