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【社説】

クロマグロ 魚食文化の曲がり角

 世界一のクロマグロ消費大国日本で密漁まがいの不正が横行、資源保護の国際公約も守れなかった。すしや刺し身は日本が誇る食文化。ルールを守り、その豊かさを後世に伝えてこその文化である。

 日本近海など太平洋クロマグロの資源量は、最盛期の十分の一程度に減っている。国際自然保護連合(IUCN)は二〇一四年、絶滅危惧種のリストに載せた。

 太平洋クロマグロの資源管理に当たる国際機関、中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)は資源回復に向けてその年、重さ三〇キロに満たない幼魚の漁獲量を、半分に減らすことで合意している。

 六月末までの一年間で四千七トンが、日本に許された漁獲枠。ところが規制開始二年目のことしもうすでに、四月末までにその上限を超えてしまった。

 西日本を中心に「予想外の豊漁」で、他の魚種を狙った定置網での混獲が増えたこともある。

 だが、水揚げ量の過少申告や、未承認の漁船による“密漁”などの不正も横行しているという。

 日本は、世界最大のクロマグロ消費国。西太平洋の漁獲量の八割を占め、その上輸入も多い。魚食文化の伝統を守り、マグロを食べ続けるためには、資源保護の手本を示す立場にあり、海外や自然保護団体からの風当たりは強まっている。

 政府は来年以降、成魚も含め、海域の「漁獲可能量(TAC)」を事前に決める、罰則付きの総量規制に乗り出す方針だ。

 それでも公約破りが続いた場合、自然保護の観点から「しばらく全面禁漁を」ということにもなりかねない。

 海は広いが有限だ。そこに生きる魚介類、私たちが「資源」と呼ぶ生き物たちも有限だ。

 増やさずに捕り続ければ減っていき、いつかは絶える。

 養殖が飽食の穴を埋めるには、しばらく時間がかかるだろう。

 マグロやウナギだけではない。温暖化の影響もあらわになり、近海のスルメイカは記録的な不漁。熊野のサンマ、三河のアサリ、海ではないが琵琶湖のアユまでピンチという。日本の誇る魚食文化は明らかに曲がり角。もう乱獲と飽食は許されない。

 たとえば「旬に味わう」というたしなみも、守ってこその食文化ではないのだろうか。

 先人が文化にまで高めた豊かな「食」を次世代に伝え残すには、消費者の協力も欠かせない。

 

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