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【社説】

中国「一帯一路」 ウィンウィンが全てか

 中国が主導する「シルクロード経済圏構想(一帯一路)」が本格始動した。習近平国家主席の看板政策だが、米主導の国際秩序転換の狙いが垣間見える。地域の緊張を高める懸念もぬぐえない。

 「一帯一路」は習氏が二〇一三年に提唱した。中国から中央アジア、欧州へ続く陸の経済ベルト(一帯)と、東南アジア、インド、アラビア半島を経て欧州へ続く海のシルクロード(一路)で構成される。中国は沿線国間の政策交流、インフラ相互連結、貿易推進、資金融通などが目的だとする。

 今月中旬に北京で開催された「一帯一路」の国際会議で、習氏は「一帯一路を平和への道とし、協力と相互利益(ウィンウィン)を核心とする新たな形の国際関係を構築しなければならない」と強調した。

 「一帯一路」の沿線には七十カ国以上あるとされ、会議には二十九カ国の首脳をはじめ百三十カ国・地域の代表が参加。習氏は構想を支えるシルクロード基金の新たな積み増しだけで一千億元(約一兆六千四百億円)を拠出すると表明し、大きな拍手を浴びた。

 習氏は「成果は共同で享受するものだ」と述べたが、構想には中国が巨大なインフラ建設を通じて沿線国への政治的影響力を強める狙いもあろう。関係国には、中国主導の経済圏拡大を米主導の国際秩序を転換するテコにしようとしているとの見方も根強い。

 沿線国が巨額投資を歓迎する一方で疑心暗鬼になるのは、中国が国際法に違反して南シナ海で実効支配を進めるなど強権的なふるまいを改めないからである。

 構想の目玉の一つである「中国パキスタン経済回廊」に反発し、パキスタンと領有権問題を抱えるインドは会議への首脳派遣を見送った。構想は地域の緊張を高める恐れもある。

 中国はインフラ投資を名目にした進出で自国利益ばかりを図るのではなく、地域の安全保障や沿線国の事情、環境保護などにもきめ細かく目配りしてほしい。

 今回の国際会議開催は、中国の首脳部人事が議題となる秋の共産党大会を前に、習氏が自身の看板政策が国際的に支持を得たと国内向けにPRする狙いも潜む。

 だが、中国は経済の先行き不安などで資金の海外流出が続き、構想を支える資金面に不安もある。もしも指導者の威信のため民生を犠牲にするようなことがあれば、本末転倒であろう。

 

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