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【社説】

核物質の飛散 安全文化が育たない

 防がねばならない事故が起きた。実態が分かるほどあきれる。日本原子力研究開発機構(原子力機構)のプルトニウム飛散事故だ。その程度の安全認識で、果たして原子力を扱えるのだろうか。

 事故は原子力機構・大洗研究開発センター(茨城県大洗町)で、プルトニウムとウランを混合した核燃料物質の入った貯蔵容器の点検中に起きた。核燃料はポリ容器に入れられ、それを二重のビニール袋で包み、ステンレス製の貯蔵容器に入れていた。貯蔵容器のふたを持ち上げた瞬間、ビニール袋が破裂し、黒い粉末が床にまで飛び散った。

 この作業は貯蔵容器が長年、放置されていたため、原子力規制庁の指示で行っていた。過去にもビニール袋が膨らんでいたことはあったが「破裂は想定していなかった」と原子力機構は説明する。

 プルトニウムもウランもアルファ線を出す。アルファ線は紙一枚でも防げるが、肺など体内に取り込まれると発がん性が高い。プルトニウムはウランと比べて、重量当たりの影響が非常に大きい。そのため、内部被ばく対策としてグローブボックスと呼ぶ完全密閉型の設備で作業するのが一般的だ。同センターには三十六台もある。それでもプルトニウムを取り出す予定がなかったので、別の設備を使ったという。

 安全対策もずさんだったが、事故後の対応もお粗末だった。五人の作業員を汚染された部屋から出すまでに三時間もかかった。当初、大量被ばくとされたが、皮膚の洗浄が十分でなかったための誤測定だったという。

 原子力機構は最先端の研究開発を担い、優秀な研究者が多いとされる。一方、源流の旧動力炉・核燃料開発事業団(動燃)時代から高速増殖炉もんじゅのナトリウム漏れ事故など、トラブルも多い。

 電気事業連合会のHPに「原子力の安全文化」という項目がある。「原子力施設の安全性の問題が、すべてに優先するものとして、その重要性にふさわしい注意が払われること」と定義している。

 安全文化は、一九八六年のチェルノブイリ原発事故を契機に生まれた。同事故の根本原因は、国レベルから現場の作業者にいたるまでの意識の問題とした。福島第一原発事故後にも繰り返し言われた。

 今回の事故は、安全文化が根付いていないことを示している。そうであるのなら、原子力を扱うことはできないはずだ。

 

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