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【社説】

コール氏死去 「欧州の家」は夢でなし

 ドイツ統一の先にコール元首相が見据えていたのは、欧州統合だった。時を経た今、その理想は揺らいでいるが、諦めてはならない。そもそも統一だって、夢物語と思われていたではないか。

 ヘルムート・コール氏が亡くなった。八十七歳。記者会見では身長一九三センチの肥満体、巨漢ぶりに圧倒されたことを思い出す。

 業績も、超ど級だった。旧西独首相時代、旧東独民主化運動の高まりでベルリンの壁が崩壊すると、米英仏、旧ソ連を説得し、第二次大戦後分断されていた東西ドイツを統一させた。統一宰相とたたえられた。

 夢かなった後、コール氏への評価は一変する。「花咲く大地にする」と約束した旧東独地域の再建は遅れ、荒廃した工場や農地は残ったまま。失業者は四百万人を超え、たそがれの宰相とやゆされるようになった。一九九八年の総選挙で敗れ首相の座を明け渡した。

 「ドイツ統一と欧州統合はメダルの表裏」がコール氏の信念だった。第二次大戦で兄を亡くし、出身地の州はフランスと国境を接していた。独仏争いの歴史を身近で知り、平和の大切さを痛感した。

 その欧州統合は今、行き詰まっている。英国が欧州連合(EU)からの離脱を決定し、相次ぐテロや難民受け入れなどで、国境の垣根を低くしたいとのEUの理念は脅かされ、コール氏の後継者メルケル氏は苦境に立つ。メダルの裏のもうひとつの夢は、ついえたのだろうか。

 ドイツ統一のその後を振り返ってみたい。コール氏の後に首相になったシュレーダー氏は、労組を支持基盤とするにもかかわらず、経済改革を断行。失業給付金の支給額を引き下げ支給基準を厳格化するなどして就業を促した。失業者数は現在、約二百五十万人にまで減った。

 統一後四半世紀以上たった今、経済発展は全土に行き渡り、統一を後悔する声は聞かれない。過疎地もあるが、難民移住による活性化など、ピンチをチャンスに変える方策も検討されている。

 EUにもこの経験が生かせないか。行き詰まりは課題をあぶり出す好機でもある。官僚主義や融通のなさ、民意の反映しづらさ、加盟国拡大に伴う意思統一の難しさなどが浮かび上がっている。

 コール氏の交渉力と、その後の思い切った改革。ドイツ統一の知恵に学び、コール氏悲願の「欧州の家」を盤石にしたい。

 

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