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【社説】

元稲沢市議裁判 一日でも早い釈放を

 中国での覚醒剤事件で死刑を含む重刑を求刑された元愛知県稲沢市議の裁判は起訴から三年余となるのに判決が言い渡されない。検察の立証は不十分であり、一日でも早い被告の釈放を求めたい。

 元愛知県稲沢市議の桜木琢磨被告(73)は二〇一四年七月に麻薬運搬罪で起訴され、八月下旬に初公判が開かれた。

 蒸し暑い広東省広州市の裁判所で開かれた初公判で、検察側は被告が覚醒剤の存在を知って運搬したと主張した。桜木被告は「覚醒剤の存在を知らなかった」と無罪を主張し、無罪の主張はその後も一貫している。

 中国の法律は起訴から遅くとも三カ月以内に判決を出すよう求める。死刑の可能性がある重大犯罪の場合は最高人民法院(最高裁に相当)の許可を得て延長も可能だとはいえ、起訴から三年以上も経過し、十一回も勾留期限が延長されたのは不当な扱いである。

 こんなに長期に判決を先延ばしするのは甚だしい人権侵害である。高齢な被告の健康面も考慮し、まずは釈放すべきであろう。

 中国の麻薬運搬罪の成立には、麻薬だと明確に知りながら故意に運ぶことが必要である。

 弁護人は「他人にだまされて運ぶ行為は犯罪にならず、検察は被告が麻薬の存在を知っていたと明確に立証できなかった」として、無罪判決を求める。被告自身も「(運搬を依頼された)アフリカ人にだまされた」と主張している。

 裁判所は「事件が複雑で証拠を確認する必要がある」と、判で押したように同じ理由で勾留を延長してきた。だが、検察の立証を不十分だと認識するからこそ、裁判所は判断を先延ばしにしてきたのではないか。

 中国司法でも「疑わしきは被告人の利益に」とする刑事裁判の原則は採用されている。習近平政権が「依法治国」を掲げるのなら、一日も早く無罪判決を出すのは当然であろう。

 中国では、冷え込んだ日中関係が、日本の元公職者に無罪判決を出すことを阻んでいると指摘する声もある。だが、国際関係などの政治が司法に影響を与えるのであれば、中国流の法治にすぎないと批判されても仕方がない。

 中国では邦人拘束が相次ぎ、一部は釈放された。拘束が続く二人について当局は「反スパイ法違反」とするが、具体的な容疑内容は闇の中だ。何よりも司法手続きの透明性を高めてほしい。

 

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