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【社説】

犯罪被害給付金 不断の見直し続けたい

 犯罪被害者への給付金支給制度について警察庁は支給条件を見直す。現行では原則支給されない親族間の犯罪も対象とする。夫婦間の殺人事件で後に残された子どもらにも手厚い支援を求めたい。

 だれもが事件に巻き込まれる可能性はある。犯罪被害給付制度は、犯罪に遭った本人や遺族を社会全体で支えようと一九八一年に施行され、改正を重ねてきた。

 現行では被害者が死亡した場合に最高約三千万円が遺族に給付され、けがや病気にも治療費などの給付がある。警察庁のまとめでは、二〇一六年度に受給した人は三百九十人、支払総額は約八億八千二百万円だった。

 それでも原則として支給されない犯罪がある。夫婦や親子の間で加害者と被害者となった事件だ。「被害者に支払われた給付金が加害者に流れる恐れがある。加害者を利することになれば社会の納得を得られない」として、国が給付に否定的な見解を示してきた。

 しかし、この考え方にどれほど現実性があるのだろうか。

 核家族化が進んだ今、夫婦など親族間の犯罪は年々増える傾向にある。全国の警察が一六年に摘発した殺人事件(未遂を含む)七百七十件のうち、55%は親族の間で起きている。

 父と母の間で殺人事件が起きた場合も、残された子どもへの給付には制限がかけられるが、計り知れない痛手を負った子どもが被害者として扱われないのは理不尽ではないか。こうした線引きによって経済的に追い詰められ、学業の機会を得られない子もいる。

 犯罪被害者を支援する制度でありながら、現状では対象外になる人の割合が増えている。不支給の方が多い逆転現象が続くなら、制度として機能しなくなる。

 親族間の犯罪をどう扱うのか。給付金の支給要件を見直そうという論議は、十五年前に両親と姉の長男(当時十二歳)を義兄に殺害された被害者遺族らの訴えを受けて始まった。警察庁の有識者会議がまとめた提言で、緩和の道筋が示されたのは一歩前進だろう。

 被害者が加害者の暴力から逃げるために別居していたり、離婚調停中であるなど家族関係が事実上破綻していた場合は全額を支給するとし、無理心中などで残された十八歳未満の子どもについても支給を求めた。

 警察庁は提言に沿った運用を来年四月にも始める。被害者に対する支援はまだ道半ばにある。不断の見直しを続けたい。

 

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