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【社説】

強権ポーランド 自由への気概忘れるな

 ポーランドで報道の自由を侵害し、司法に介入する強権政治が進んでいる。社会主義時代に抱いた民主化や自由への熱い思いをいま一度、思い起こし、欧州連合(EU)の価値観を共有したい。

 上下両院は七月、裁判官の人事権を持つ評議会のメンバーを下院が選出することなどを定めた法案を可決した。三権分立を損なう内容だ。一昨年十月の総選挙で勝利した右派政党「法と正義」政権は憲法裁判所の判事をすげ替え、公共放送や通信社を国有化し、司法や報道への介入を続けてきた。今回の法案もその一貫だ。

 司令塔となっている党首のカチンスキ元首相は、ともに政権交代を繰り返してきた中道リベラル政党への敵意を募らせる。

 「法と正義」はカトリック的価値観重視を掲げて党勢を拡大。子ども手当拡充や、年金受給年齢引き下げなどの社会保障をアピールし、地方で暮らす人や中小企業経営者らの支持は根強い。

 強権体質と自国第一主義はトランプ米大統領とも通じる。トランプ氏は七月の二十カ国・地域(G20)首脳会合のための訪欧の際、わざわざワルシャワに立ち寄り、「法と正義」出身のドゥダ大統領と会談した。

 ポーランドでは二〇〇四年のEU加盟後、域内での貿易や就業が活発となり、経済は好調だ。しかし、EUは単なる経済共同体ではない。民主主義、自由の保障などの価値観共有が基盤となる。

 与党の司法介入に対し、ポーランド各地で市民らが連日、抗議デモを繰り広げている。

 社会主義政権下では、自主管理労組「連帯」が中心となり自由選挙を勝ち取ってきた。その気概と誇りを思い起こし、自由な社会を守ってほしい。

 EUは、「法の支配順守」を定めたEU基本条約違反の疑いがあるとして、加盟国議決権停止などポーランドへの制裁を検討している。これに対し、やはり強権政治を進めるハンガリーは反対、EU内の亀裂も深まっている。追い詰めてしまうと、ポーランドやハンガリーも、EU離脱へと走りかねない。

 ドゥダ大統領は可決された司法介入法案への署名を一部留保した。社会の分断を進めてはいけないとの危機感からだろう。

 EUのトゥスク大統領は「法と正義」の政敵であるポーランドの中道リベラル政党出身。EUとの懸け橋となり、極端へと走る母国に歯止めをかけてほしい。

 

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