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【社説】

習近平思想 「文革再来」誰も望まぬ

 中国共産党の指導部人事を決める秋の党大会を前に「習近平思想」を党規約に盛り込む動きが浮上している。独裁的な一強体制を狙う政治運動は、「文化大革命」の再来という悪夢すら懸念させる。

 新中国で個人名を冠した指導理念は「毛沢東思想」と「〓小平理論」があるが、「思想」の方が「理論」より上位の理念とされている。

 習近平氏の前任である胡錦濤前総書記には調和の取れた社会を目指す「科学的発展観」、その前任の江沢民元総書記には企業家の入党に道を開いた「三つの代表」という指導理念があるが、個人名は付けられていない。

 腐敗撲滅など厳格な党統治を基本とする「習近平思想」が党大会で党規約に盛り込まれるかどうかはまだ不透明だ。だが、実現すれば、習氏は新中国建国の父とされる毛沢東と肩を並べるカリスマ指導者として位置付けられよう。

 農民を基盤とする革命運動を柱にした毛沢東思想は、マルクス・レーニン主義と並び、共産党が依拠すべき政治指導方針とされた。

 歴史を振り返れば、一九六六年に毛沢東が発動した文化大革命はこの毛沢東思想を「高く掲げる」という形で展開された。

 独裁的な権力掌握を狙った文革という政治運動で、毛の指示が絶対視された個人崇拝の負の歴史を中国は繰り返すべきではない。

 残念ながら、党大会を前に習氏は政敵粛清や側近重用の政治姿勢を露骨にしている。中国では知識人を中心に「文革再来の恐れがある」との声すら聞かれる。

 習氏側近の一人である北京市トップの蔡奇・同市党委員会書記は八月、幹部の学習会で習氏の政治理念について「長期にわたり堅持する指導思想」と持ち上げた。

 七月以降、中国全土の党組織で「習思想の学習活動」が展開されている。習氏の演説やこれまでの実績をまとめた「習近平本」も次々と発行されている。

 中央や地方の幹部指導者が習氏におもねるように「習近平思想」を持ち上げ、熱に浮かされるように習氏礼賛の声が巻き起こる社会の現状に危機感を覚える。

 文革時代には民衆が「毛語録」を高く掲げ、学校や職場で内容を暗唱することが強要された。

 世界第二の経済大国として存在感を増す中国だけに、国民が強いリーダーを求めるのは理解できる。だが、集団指導体制を逸脱した文革期の個人崇拝のような統治は誰も望まぬものと信じたい。

※〓は、登におおざと

 

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