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【社説】

トランプ氏演説 脅して何を得るのか

 敵と味方を峻別(しゅんべつ)して社会の分断を深める手法は、外交姿勢でも同じようだ。トランプ米大統領の初の国連演説は、敵と見なす国への敵意と脅しに満ちていた。これでは世界を不安定化させるだけだ。

 トランプ氏は北朝鮮とイラン、ベネズエラを「ならず者国家」と呼んだ。北朝鮮に対しては「米国や同盟国の防衛を迫られる事態になれば、北朝鮮を完全に破壊するしか選択肢はない」と最大限の脅しを利かした。

 これに先立って登壇したグテレス国連事務総長は北朝鮮の核・ミサイル問題に絡んで「激しい言葉のぶつけ合いは致命的な誤解につながる危険がある」と警告を発したばかりだった。

 トランプ氏と金正恩朝鮮労働党委員長の予測不能な両トップによる威嚇の応酬は、不測の事態を招きかねない。

 安倍晋三首相と文在寅・韓国大統領は二十一日にトランプ氏と会談する予定だ。軍事衝突になれば両国に甚大な被害が及ぶ危険が大きい。日韓首脳はトランプ氏に自制を促すと同時に外交努力を尽くすようくぎをさしてほしい。

 トランプ氏はイランについても「暴力と流血、混乱を輸出している。この残忍な体制が地域を不安定化させているのを許すわけにはいかない」と非難した。

 欧米など主要六カ国がイランと交わした核合意を破棄する意向をにじませたことも気掛かりだ。

 トランプ氏はイラン核合意を「最も一方的で最悪な取引の一つだ。率直に言って米国の恥。問題がこれで終わったとは思わないでほしい」と述べた。ティラーソン国務長官も合意の見直しが必要だと言いだした。

 核合意がほごになれば、中東で核開発競争が始まるばかりか、イランとイスラエルの軍事衝突も懸念される。

 米国第一主義を掲げるトランプ氏は「自分の流儀を他人に押しつけるつもりはない」と他国の内情に口出ししない意向を示した。

 半面、独裁色を強める南米ベネズエラのマドゥロ政権には「事態を傍観できない。さらなる行動を起こす用意がある」と脅した。敵国への干渉は例外だと言うのだろうか。

 こうした対決姿勢には、相互理解を深めたり融和を図ろうという意思はうかがえない。敵と見なされた国は憎しみを募らせるだけだ。超大国としての責任の重さを持ち合わせていないのなら、危険ですらある。

 

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