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【社説】

消費税の使途 安倍さん、自己否定だよ

 安倍晋三首相が消費税増税の使途変更を明言したのはアベノミクスの自己否定だろう。「経済再生と財政再建の両立」といいながら成長頼みの税収は増えず、財政再建目標の旗も降ろすからである。

 首相は二十八日に召集する臨時国会の冒頭で衆院を解散する意向といわれる。併せて二〇一九年十月に消費税率を8%から10%へ予定通り引き上げること、増収分の使い道について財政再建に充てる分を減らして教育無償化などに財源を回す考えを明らかにする方針だ。

 財政健全化目標の国際公約である「基礎的財政収支(プライマリー・バランス=PB)の二〇年度黒字化」についても、達成時期の先送りを表明する見込みだ。

 アベノミクスは、成長によって税収を伸ばし、その果実で経済を再生して、世界最悪の財政も再建させるとしてきた。当初は税収が増え、日銀の超低金利政策もあり、消費税増税を二度延期するといった財政規律のなさでも何とか財政運営は回ってきた。

 しかし、昨年度は税収が減少に転じた。異次元の金融緩和も物価上昇目標を達成できず、アベノミクスの行き詰まりは明らかだった。首相はこれまで「道半ば」と繰り返すばかりだったが、もはや通用しない状況だと自覚すべきだ。

 PB黒字化達成時期の先送りに追い込まれたことは国債の格下げリスクや異次元緩和の出口戦略をさらに困難にする恐れがある。

 問題はほかにもある。消費税の使途変更は民進党の前原誠司代表が訴えてきたものだ。首相が同じような公約を唐突に言い出したのは衆院選の争点つぶしが狙いだろう。与党で議論したこともなく、自民党内から「思いつきでいわれても、そうですかとはいかない」と不快感を表す声さえ上がった。

 野党第一党の代表が打ち出す政策を臆面もなく取り入れ、自前の看板のように掲げる。これまでも同一労働同一賃金などがあり「抱きつき戦術」と揶揄(やゆ)されてきた。

 百歩譲って、野党の政策でも国民が望むなら政権党として実現を目指すというならまだしも、問題なのは看板は同じでも中身は国民が求めるのとは違うものに都合よく変えてしまうことだ。

 民進党の検討案は2%分を社会保障に回すが、それは受益感を高め、増税への抵抗感が強い国民の意識を変えようという「哲学」がある。冷たい自己責任社会から負担を分かち合う社会への転換。思いつきの人気取り政策とは違う。

 

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