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【社説】

重力波が受賞 ビッグサイエンス時代

 重力波を発見した米国の研究者らに、今年のノーベル物理学賞が贈られる。重力波は長年、物理学者が探し求めていた。宇宙の始まりから現在までの進化を知る手掛かりになると期待されている。

 アインシュタインの予言からちょうど百年後にあたる昨年二月、米国を中心とするチーム「LIGO(ライゴ)」が重力波望遠鏡二台を使って初めて重力波の検出に成功した。記者発表の席で、責任者は「We did it!(やった!)」と言った。We(私たちは)という言葉に研究の特徴が表れている。

 受賞者三人は研究チームを率いたが、成果を支えた人は多い。日本人研究者も理論面で貢献した。先月下旬には、イタリアにある欧州重力観測所の観測装置が米国と同時に四例目の重力波を捉えたと発表した。大きな科学的な課題を世界が力を合わせて解決した。

 日本でも岐阜県飛騨市の鉱山跡で観測装置「かぐら」の建設が進んでいる。一番乗りは果たせなかったが、観測装置が増えれば、さらに多くのことが明らかになるだろう。

 物理学に限らないが、最近、巨額の研究費と多くの研究者を必要とするビッグサイエンス(巨大科学)が増えている。LIGOは長さ四キロのパイプを二本、L字形に組み合わせたような装置だ。広大な敷地に最先端の機器を集め、多くの研究者がそれぞれの担当分野に分かれて全力を尽くす。薄暗い研究室に閉じこもる孤独な天才は、遠い過去の科学者像だ。

 巨大な研究施設を一国が建設、維持するのは困難になっている。このため国際協力が増えている。わが国も参加するだけでなく、誘致にも努めたい。

 たとえば、岩手県が国際リニアコライダー(ILC)の誘致を進めている。素粒子を光速近くまで加速して衝突させる実験装置だ。宇宙の始まりであるビッグバンを再現できるという。東日本大震災の被災地にできれば、復興に役立つ。青少年に科学への興味を持ってもらえる。

 一方、今回の発表は、ノーベル賞のルールが時代に合わなくなってきたことも感じさせる。医学、物理学、化学の三賞の受賞者は最大三人までと決まっている。ビッグサイエンスでは、プロジェクトリーダーしか選べない。理論物理学の成果は実験や観測で確かめられるまでは受賞するのは難しい。存命者に限られるので、むろんアインシュタインの名はない。

 

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