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【社説】

自民論点整理 「改憲ありき」では困る

 自民党憲法改正推進本部が提示した改憲四項目に関する論点整理は、改憲を前提としているが、それでいいのか。改憲しなければ本当に対応できないのか。根源的な議論に立ち返るべきである。

 論点整理は同本部でのこれまでの検討結果をまとめたもので、十月の衆院選で政権公約の重点項目に掲げた、自衛隊の明記▽教育の無償化・充実強化▽緊急事態対応▽参院の合区解消−の四項目を取り上げている。

 焦点の九条については、一、二項を維持したまま自衛隊の存在を明記する案と、戦力不保持と交戦権の否定を定めた二項を削除して「自衛隊の目的・性格をより明確化する改正を行う」案を併記した。

 前者は安倍晋三首相(党総裁)の意向に沿った案、後者は党が野党時代の二〇一二年にまとめた改憲草案に近い内容である。

 二十日の同本部全体会合では二項維持、削除の両論に割れた。党内で意見集約を図る一方、「各党各会派から具体的な意見・提案があれば真剣に検討する」という。

 戦力不保持の二項を削除する九条改憲案に比べると、維持したまま自衛隊を明記する案は、より穏当に見えるかもしれない。それが首相の狙いなのだろう。

 しかし、本当に九条改憲が必要な切迫した状況にあるのか。

 歴代内閣は、専守防衛に徹する自衛隊は戦力には該当せず、九条の下でも合憲と位置付けてきた。憲法に自衛隊の存在を明記しないことが活動領域や予算の膨張を防ぐ歯止めとなったことも現実だ。

 安倍内閣は「集団的自衛権の行使」を一転容認したが、このまま自衛隊を憲法に明記すれば、歴代内閣が違憲としてきた活動が許される存在として、自衛隊を追認することになってしまう。

 他の三項目も同様だ。法整備や予算措置の努力を怠り、改憲によって問題を解決しようというのは安易な発想だ。そもそも改憲によって「一票の不平等」を積極的に認め、参院の合区を解消するやり方は、法の下の平等に反する。

 憲法に改正手続きが規定されている以上、改憲の議論自体は否定されるべきではないが、現行憲法に著しい不備がないにもかかわらず、改憲に向けた議論を強引に進めるのなら「改憲ありき」との批判は免れまい。

 憲法について議論するのなら、そもそも改正が必要なのかという問題意識を常に持つべきだろう。自民党が一方的につくる議論の土俵に、安易に乗ってはならない。

 

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