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【社説】

ニッポンの大問題 半島危機打開めざせ

 韓国で開かれる平昌(ピョンチャン)冬季五輪を契機に、韓国と北朝鮮の南北対話が約二年ぶりに開かれます。朝鮮半島で続く危機打開の一歩にしなくてはなりません。

 五輪会場となる平昌は、北朝鮮に近い韓国北部江原道(道は県に相当)にあります。先月ソウルと会場をつなぐ高速鉄道が開通し、約一時間半で行けるようになりました。二月九日から二十五日までさまざまな競技が開かれます。

 ただ昨年来、北朝鮮が核やミサイル実験を繰り返したこともあって、五輪への関心はいまひとつ。「危険なことが起きるのではないか」と、行くのをためらう人も少なくありませんでした。

◆狙いは韓国取り込み

 そこに北朝鮮のトップである金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長が、一月一日の「新年の辞」で、平昌五輪の意義を認め、「北朝鮮も代表団の派遣の用意がある」と明言したのです。韓国側も、さぞほっとしたことでしょう。

 さっそく文在寅(ムンジェイン)大統領が歓迎コメントを発表し、韓国側が九日に高官会談を行うことを提案したことからも分かります。北朝鮮も、この提案を受け入れました。

 思い返すと昨年、東アジアは北朝鮮に振り回されました。弾道ミサイルの発射は年間十五回。九月には大陸間弾道ミサイル(ICBM)搭載用の核実験も強行し、「核戦力完成」を宣言しました。

 これに対して、国連の安全保障理事会は、十回目の対北朝鮮制裁決議を出しています。一つの国に、これだけ多くの制裁決議が出されたことは、かつてありませんでした。

 制裁は厳しくなっています。北朝鮮の市民生活や軍の活動を支える石油は、厳しい輸出制限がかけられました。外貨稼ぎのため、世界に派遣されている出稼ぎ労働者に対しても、二年以内の帰国を求めています。北朝鮮の経済に、制裁が重くのしかかっているのは間違いありません。

◆それでも対話は必要だ

 こういったタイミングで、北朝鮮が五輪参加をにおわせ韓国に対話を呼びかけたことについては、その意図を疑うしかありません。

 米国をはじめとする国際社会は、自分たちへの追及の手を休め、当面見守るはずだ。北朝鮮に厳しい日米と韓国を離間させられると計算しているかもしれません。

 肝心の北朝鮮の核・ミサイルに関する姿勢は全く同じです。「新年の辞」の中で金正恩氏は、「米本土全域が、われわれの核攻撃の射程内にある」「核のボタンが常に私の机の上に置かれている」と脅しの言葉を口にしています。近く、ICBM発射実験に踏み切る可能性も指摘されています。 

 それでも、北朝鮮のわずかな「変化」を逃すべきではないでしょう。韓国のことわざに「始まりは半分(終わったのと同じ)」があります。「とにかく、始めることが大切」という意味です。

 同じテーブルに座らなければ、相手の本心も分かりませんし、国際社会の厳しい見方も伝えられません。やる価値はあります。

 日本のシンクタンク、言論NPOと米国のメリーランド大学が昨年末に発表した北朝鮮政策をめぐる世論調査では、米国では約三割、日本は約七割が「北朝鮮の核兵器開発問題は解決が難しい」と、悲観的に見ていました。

 しかし、「北朝鮮の核開発を止める最も有効な方法は何か」と聞くと、意外にも、制裁強化や米国の軍事行動よりも対話を望む人が多かったのです。

 米国では「周辺国による多国間での外交努力を続ける」が35・3%と最も多く、日本では「米朝の直接対話」の20・6%をはじめ、半数を超える人が外交努力に期待していました。

 今回の南北対話再開についてトランプ米大統領は、北朝鮮に対する自分の断固たる姿勢が実現に役立ったとして、「いいことだ」と自画自賛しました。

◆挑発自制すると明言を

 そして、五輪期間中に行われる予定だった米韓合同軍事演習を、韓国側の要望に応じて延期しました。評価できる決断です。

 安倍晋三首相は、北朝鮮の脅威にさらされる日本の現状をしばしば「国難」と表現しています。スポーツ交流を通じて、その国難が、少しでも解消される可能性があるのなら、対話の成功のため協力すべきでしょう。

 最後に、金正恩氏が認識すべきことがあります。北朝鮮が南北対話を隠れみのにして挑発行動に出た場合、韓国は対話を継続できません。国際社会も、対話による核問題解決の希望を失うでしょう。今回が最後のチャンスです。少なくとも、核実験や弾道ミサイル発射の一時中断を宣言するなど、危機打開に向けた具体的行動を示すことが必要です。

 

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