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【社説】

シリア攻撃 力任せでは平和は来ぬ

 合法性に欠ける武力行使である。米国が英仏とともに行ったシリア空爆だ。アサド政権が化学兵器を使用したと断定した上での懲罰的な攻撃だが、力任せではシリアに平和は来ない。外交を見せよ。

 国連憲章は原則として他国への武力行使は禁じている。例外として安保理の容認決議がある場合と、自衛権行使の場合は武力行使を認めている。

 だが米欧三カ国は化学兵器使用の証拠を示さず、安保理決議もないまま攻撃に踏み切った。

 トランプ米大統領は空爆の目的を「化学兵器の製造、拡散、使用に対し強力な抑止力を確立することであり、抑止力確立は米国の死活的利益だ」と説明した。

 シリアから直接攻撃を受けたわけではないので、トランプ氏の主張を自衛権の発動と見なすのも無理がある。

 トランプ氏はつい最近「あとのことはほかの人たちに任せよう」と、シリアからの米軍撤退を主張した。

 それが一転して武力介入だ。内戦を終結させる確たるビジョンがあるわけではなく、思いつきに近い。一年前、やはりシリアの化学兵器使用を理由に行った空爆も同じだった。

 北朝鮮へのけん制の意味合いもあるだろうが、トランプ氏には軍事力を使ってみたいという気持ちがあるのではないか、とさえ思えてくる。

 シリア和平に向けて米国に求められるのは、気まぐれとは正反対の粘り強い関与である。

 一方、自国民への虐待を続けるアサド大統領は正統性を失っている。その後ろ盾であるロシアとイランには大きな責任がある。

 とりわけロシアは二〇一三年、オバマ前米政権がシリア攻撃の構えを見せた際、アサド政権に化学兵器の破棄を約束させた。ところがシリアをめぐる安保理議論では、欧米とことごとく対立する。

 八年目に入ったシリア内戦は、共通の敵の過激派組織「イスラム国」(IS)がほぼ壊滅し、関係各国・各勢力が入り乱れての戦闘に入っている。

 在英NGOのシリア人権監視団によると、死者は五十万人を超えた。国連難民高等弁務官事務所のデータでは、国外に逃れた難民は五百六十万人、国内難民も六百十万人に上る。

 内戦が長期化した背後には、米ロの対立が影を落とす。両大国にはそれを乗り越える必要と責任を求めたい。

 

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