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【社説】

南北首脳会談 非核化宣言を行動へ

 十年半ぶりに開かれた南北首脳会談で、焦点となっていた核問題は、「完全な非核化」で双方が合意し、宣言文に盛り込まれた。次は実行に移す段階だ。

 これほど南北の距離が縮まり、首脳会談、そして共同記者会見まで行われるとは、誰も想像できなかったに違いない。

 昨年北朝鮮は、ミサイルの発射実験を十五回繰り返した。「水爆実験」と称する六回目の核実験まで強行した。

 米国との軍事衝突の危険性がささやかれ、不安が高まった。

◆想像できない接近

 ところが今年一月一日になって金正恩(キムジョンウン)・朝鮮労働党委員長が新年の辞を発表し、一転して韓国で開かれる平昌冬季五輪への協力を表明し、一気に動きだした。

 まず北朝鮮を対話に導いた文在寅(ムンジェイン)・韓国大統領の粘り強い努力を高く称賛したい。

 韓国側で会談に応じた正恩氏の決断も評価したい。

 その上で、首脳会談後に発表された「板門店宣言」を見ると、不十分な点もある。

 会談の最大の焦点だった「非核化」については、「完全な非核化を通じ、核のない朝鮮半島を実現するという共通の目標を確認した」という表現になった。

 韓国は、これまで正恩氏が間接的に表明してきた「核放棄」の意思について、「完全な非核化」という表現で、宣言文に盛り込むことを目指していた。

 そして、六月初旬までの開催で調整中の、米朝首脳会談につなげる考えだった。

 北朝鮮側は、韓国側を含めた「朝鮮半島の非核化」を主張しており、将来的な在韓米軍の縮小、撤退を念頭に置いているようだ。

 正恩氏は共同記者会見で、「過去に結ばれた南北の宣言についての徹底した履行」を求めた。

◆非核化で食い違い

 これは一九九一年十二月に韓国との間で合意、発表した「朝鮮半島の非核化に関する共同宣言」を指すとみられる。そうなら、北朝鮮は自国だけの非核化を、拒否しているとも受け取れる。

 核問題について北朝鮮は今月二十日、朝鮮労働党中央委員会総会を開き、核実験や、大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射実験の中止と、北東部・豊渓里(プンゲリ)核実験場の廃棄を決定した。

 この決定には、核放棄をうかがわせる表現がなく、逆に「核保有国宣言であり、核は放棄しない」と受け取る見方もある。

 宣言は、南北の食い違いを残したまま意見を折衷した。それでも正恩氏の非核化への意思を、文書化できたことは価値がある。

 合意文を土台に、北朝鮮はできるだけ早く、核施設の公開、査察の受け入れといった具体的行動に進むべきだ。実行がなく理念ばかりなら、米朝首脳会談は不調に終わってしまう。

 さらに発表文には、朝鮮戦争(一九五〇〜五三年)について、区切りをつける「終戦宣言」が盛り込まれた。

 朝鮮戦争は休戦中であり、法的には戦争が継続している。

 南北は「いかなる武力もお互いに使わない」とし、平和的な共存を宣言した。北朝鮮は体制の存続に安心感を抱き、核放棄へ踏みだしやすくなるだろう。

 朝鮮半島の緊張状態を根本的に解消するには、朝鮮戦争の正式な終結が欠かせない。

 今後、南北朝鮮、米中の関係国首脳が集まり、この宣言を再確認したうえで、休戦協定を平和協定へと早急に切り替えるべきだ。

 この他、南北首脳会談の定例化に合意した。秋には文氏が、平壌(ピョンヤン)を訪問するという。

 過去の南北首脳会談は、一時的な和解ムードの盛り上げには成功したが、韓国側の政権交代や、軍事的な摩擦によって、関係がたちまち冷却化した。

 その反省を生かしながら、今後も、密接な意思疎通を欠かさないでほしい。

 朝鮮戦争後に「国境」として設置されたのが「非武装地帯(DMZ)」だ。

 その中にある板門店(パンムンジョム)の軍事境界線を午前九時半、正恩氏が徒歩で越え、文氏と握手した。

◆壁がなくなる期待

 板門店は、朝鮮半島の希望と悲劇の縮図だった。鉄条網なしで南北が接触する場所として設けられ、多彩な交流が実現した。一方で、乱闘、銃撃、地雷の爆発が起き、多くの人命が失われている。

 二人はその後、高さ五センチ、幅五十センチのコンクリート製境界線をまたぎ、今度は北朝鮮側に立った。

 わずか十秒の出来事だったが、南北の壁が取り払われる予感を感じた人も多かったに違いない。世界は歴史の瞬間を目撃した。裏切らないでほしい。

 

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