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【社説】

働き方改革 やはり再考すべきだ

 裁量労働制を巡る不適切な調査データについて厚生労働省が再調査の結果を公表した。政府の働き方改革関連法案の議論の前提となった調査だが、公正な法案づくりがされたのか不信が強まった。

 安倍晋三首相が「裁量制で働く人の方が一般労働者より労働時間が短いとのデータがある」と国会で答弁したことが発端だった。

 本来比較できない、双方の労働時間を比べていたことが分かった。首相は答弁撤回と謝罪を余儀なくされ、裁量制の適用拡大は法案から削除された。

 データそのものにも一般労働者が「一日の残業時間が二十四時間超」など不自然な点が指摘された。再調査は、対象の約一万二千事業所のうち約二割を不適正として除外、再集計した。

 元のデータより一般労働者の残業時間は短くなったが、厚労省は「傾向は変わらない。統計としての有効性はある」と説明する。

 そうだろうか。

 比較する以前にデータの集め方や分析の仕方がずさんだったようだ。国の政策決定に使う重要データのはずだが、お粗末ではないか。厚労省は反省すべきだ。

 裁量制についてはなお疑問が残る。本来比較できないはずのこの制度と一般労働者を比べる不適切なデータをなぜ作成したのか経緯が明らかになっていない。

 法案作成時に厚労政務官だった自民党の橋本岳厚生労働部会長が自身のフェイスブックに「執拗(しつよう)に(データを)要求したのは野党で、繰り返し問い詰められ、(厚労省が)やむを得ず作成した」などと投稿した。後で謝罪、訂正したが、野党に責任転嫁するような姿勢は筋違いだ。厚労省は作成経緯を明らかにする責任がある。

 野村不動産の社員が裁量制を違法に適用され過労自殺していた問題では、自殺の事実を公表しなかった点などについてもいまだに説明がない。

 十六日には裁量制で働く男性が過労死したことも新たに判明した。法案から削除されたから疑問に答える責任はないとは言えまい。

 元データは、法案の議論を行った厚労省の労働政策審議会にも提出された。労働実態を把握しないままで公正な議論が行われたのか疑問だ。法案全体の信頼性に関わるのではないか。

 法案に入る高度プロフェッショナル制度(残業代ゼロ制度)は、国会審議でも長時間労働への懸念があらためて指摘されている。

 やはり法案は再考すべきだ。

 

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