東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 社説一覧 > 記事

ここから本文

【社説】

新幹線殺傷 安全安心へ知恵絞ろう

 乗客の不安が高まっている。効果的な警備態勢をどう整え、強めるか知恵を絞らねばならない。東海道新幹線で先週末に発生した無差別殺傷事件は、従来の犯罪対策の限界をあらためて突きつけた。

 神奈川県内を走行中ののぞみの車内で九日、二十二歳の無職の男が乗客三人をなたで襲い、死傷させる惨劇があった。隣り合わせた女性二人に切りつけ、止めに入った男性を殺害した疑いがある。

 警察の調べに、男は「むしゃくしゃしてやった。誰でもよかった」と供述したという。落ち度のない無関係な人々が犠牲になる凶行ほど忌まわしく、やりきれなさが残るものはない。

 男は中学時代から父親らと不仲になり、家族とは離れて暮らしていた。高校を出て会社に勤めたものの一年ほどで辞め、二年前から祖母らと同居していた。「生きている価値はない」と自殺願望を口にし、家出を繰り返していた。

 世の中への鬱憤(うっぷん)をため込み、自暴自棄に陥った末の犯行だったのか。成育環境を含め、動機につながる背景を解明してほしい。

 東京五輪・パラリンピックを二年後に控え、高速大量輸送システムの利便性と安全性をどう両立させるかは喫緊の重要課題だ。

 一九九三年には、覚醒剤常用の男がナイフで乗客を刺殺した。三年前には、男の焼身自殺に巻き込まれた乗客が落命した。刃物を振り回したり、ライターで着火したりする事件が後を絶たない。しかも、密室のような車内である。

 手荷物検査が欠かせないとの指摘は根強くある。中国やインドの鉄道駅では、エックス線装置や金属探知機を使った保安対策を実施している。欧州の一部の高速鉄道での検査は、空港並みに厳しい。

 しかし、日本の新幹線の利用者は一日に百万人を上回り、分刻みにもなる運行だ。本格的に検査すれば、乗客は長蛇の列を成して滞留し、資機材や要員にかかるコストは運賃を押し上げる。利便性は間違いなく下がる。

 監視カメラを増やしたり、乗務員らの見回りを強めたりするだけでは抑止効果は薄い。荷物に爆弾を忍ばせたテロリストに乗り込まれても見抜けまい。

 不審な挙動や手荷物に気づいたらその場で直ちに検査する。シートの座面を防具にするといった安全知識を周知する。乗客の理解と協力を得てやれる対策はある。

 危険物を検知するセンサーの技術開発などはもちろん、安全への投資は鉄道会社の責務である。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報