東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 社説一覧 > 記事

ここから本文

【社説】

就活ルール 企業、大学もっと議論を

 経団連の中西会長が二〇二一年春入社の学生の就職活動指針廃止を表明した。学生、企業の将来を左右する問題だけに、経済界、大学、政府には新たなルール策定も含めて徹底的な議論を求めたい。

 経団連は二〇年春入社の学生まで、三月の会社説明会解禁、六月の採用面接解禁−という就活日程を指針に定め、会員企業に順守を求めている。

 ただ罰則のない紳士協定で、解禁破りが六割に達しているとの調査があるほど現場では青田買いが横行している。IT関連や外資系など経団連に非加盟の有力企業はルール外で、指針が有名無実化しているとの指摘は絶えない。この数年は指針変更が相次ぎ、かえって混乱を招いた。

 こうした形骸化に加えて中西宏明会長は「終身雇用や新卒一括採用を中心にした、企業による人材育成の基本方針がだんだん成り立たなくなっている」と、廃止検討の理由を説明している。

 経済のデジタル化が世界に広がる中、これまでの採用方法では国際競争に勝ち抜くための人材を確保できない。各社の経営方針に合わせた通年採用などの導入が不可欠との危機感が背景にある。

 これに対し、就職が人生を大きく左右する学生、送り出す大学からは早くも反発が出ている。形骸化とはいえ、指針は就職活動開始の目安になっており、歯止めがなくなれば「なんでもありになってしまう」との不安があるからだ。

 この問題で安倍晋三首相は、学業の時間確保のため解禁日の後ろ倒しを要請するなど、指針の手直しで経団連と歩調を合わせてきた。政府内には中西会長の廃止表明に理解を示す声がある一方で、菅義偉官房長官は「企業側、大学側などの関係者が学生のことを十分に考えながら議論していくことが重要だ」と述べ、慎重に対応していく考えを示している。

 指針の廃止は中西会長の持論で、安倍政権と二人三脚だった榊原定征前会長時代からの方針転換といえる。ただ、経団連には新卒一括採用が入り口になっている労使協調、終身雇用という日本型雇用を評価する主要企業も多く、経団連内部の議論はこれからとなる。

 代替え策なしで廃止となれば混乱を招き、企業利益優先との批判は免れない。中小企業の採用への影響も大きい。指針に代わる何らかのルールは必要だろう。

 学生、企業の将来のために徹底した議論が必要だ。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報