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【社説】

自動車追加関税 「米国にも損」訴えを

 米トランプ政権がもくろむ輸入自動車への追加関税が現実になれば、日本の自動車業界への打撃は計り知れない。現地化が進む中、米経済にも影響する。戦略的かつ効果的に訴えて、阻止したい。

 両政府による閣僚間の新たな貿易協議は、二回目の会合が月内にも開かれる。トランプ米大統領は輸入車が自国の自動車産業に打撃を与えているとみており、十一月の中間選挙をにらみ、交渉成果をアピールする思惑のようだ。最近も、「合意しなければ大問題になる」と強く日本を牽制(けんせい)した。

 米政権は自動車の輸入関税を、最大で現行の十倍の25%まで引き上げることを検討している。追加関税が発動されれば、トヨタ自動車では日本からの輸出は一台当たり六千ドル(約六十七万円)も高くつく。昨年は約七十万台を輸出しており、単純計算で約四千七百億円のコスト増となりかねない。

 民間シンクタンクの予測だと、部品を含めた追加関税の負担額は自動車業界全体で一兆円超とも。コスト上昇分を自社でかぶれば収益に響き、米国で価格に転嫁すれば販売が落ち込む。業界だけでなく日本経済全体に影響は必至だ。

 一九九五年の日米自動車協議では、日本側が現地生産の拡大などを約束し、高級車への関税を2・5%から100%へ四十倍も引き上げられる事態を避けられた。

 今では日本の自動車大手は輸出の二倍以上の台数を米国で生産している。トランプ政権の発足後も現地生産の強化を打ち出し、トヨタはマツダと共同運営する新工場にも着工する予定。ただ、米国市場は中国ほどの伸びを望めず、一層の大幅増産は困難だ。仮に増やしても日本での生産が減れば雇用の問題につながりかねない。

 米側は車関税を交渉カードに農産物の購入拡大を迫るとの見方があるが、主導権を握られないためにも、現地生産にとどまらない米経済への貢献を訴えるべきだ。

 日本自動車工業会によると、日本の自動車大手は米工場などで九万人超を雇用。新車販売台数の四割は日本勢が占めており、販売店網では三十五万人以上の雇用を提供している。日本政府は、部品納入を含めた雇用創出は約百五十万人に上るとも主張する。

 メキシコ、カナダとの貿易交渉で目立った米国の強硬さは不気味だが、日本勢が傷めば、雇用、消費両面で米経済にも悪影響が出る。交渉の行方は、それをどう効果的に伝えるかにかかっている。

 

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