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【社説】

フン・セン氏再任 独裁の暴走に歯止めを

 カンボジアの実権を三十三年間も握るフン・セン首相が再任された。与党が国会の全議席を独占。中国の後ろ盾も得て、独裁が加速する。日本など国際社会は暴走に歯止めをかけねばならない。

 まさに一党独裁。フン・セン氏が率いるカンボジア人民党は七月の総選挙で下院全百二十五議席を独占。上院も二月の選挙で全五十八議席を得た。この結果を受け同氏は九月初め、下院であっさりと首相に再任された。

 閣僚評議会議長(首相に相当)に就いた一九八五年以来、首相二人制の時代を含めてずっと政権のトップに座り、「あと十年続ける」と豪語しているという。

 東南アジアではインドネシアのスハルト元大統領(故人)が九八年まで三十二年間君臨したが、フン・セン氏は既に上回り、現代では世界有数の長期為政者。七〇年代に虐殺などでカンボジア国民百万〜二百万人(当時の人口は五百万〜六百万人)の命を奪ったポル・ポト派に一時期所属した軍人の出身ゆえか政治手法は荒っぽい。

 第二首相だった九七年、第一首相を武力で排除。昨年九月には、前回総選挙(二〇一三年)で善戦した最大野党の党首を警察当局が逮捕、最高裁は同党に解散命令を出し、与党一党独裁につなげた。党首は釈放されたが軟禁状態だ。

 国際社会から非難を浴びるフン・セン政権を陰で支援しているとみられるのは、中国の存在。現代版シルクロード「一帯一路」の構想を進めるため、新たに二十近い経済取引に調印。中国人観光客や貿易額を大幅に増やすという。

 建前では「援助の相手国の内政に干渉しない」のが中国の方針。フン・セン氏は「何があっても中国は友人」と公言し、南シナ海の領有権争いで「当事国による問題の解決」を主張する中国を支持。お互いに利用し合っている。

 カンボジアは一人当たり国民総所得が千ドル余。東南アジア諸国連合(ASEAN)十カ国で最も貧しく独裁の長期化で汚職も横行している。日本はひと肌脱げないか。

 内戦の停戦を監視し、一九九三年の制憲議会選挙を行った国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)の代表は、日本の明石康氏だった。初の国連平和維持活動(PKO)で自衛隊員六百人が入り、文民警察官らも活動した。

 累計ではカンボジアへの最大の援助国でもある日本。政権や中国などとの対話で、四半世紀前に好発進させた民主化への歩みを再度つむぎ直せないだろうか。

 

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