東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 社説一覧 > 記事

ここから本文

【社説】

68歳の「過労死」 高齢社会を直視しよう

 六十八歳のシニア社員が勤務中に亡くなった。休憩も取れないほどの長時間労働だった。政府は高齢者の就労促進を掲げている。だが、人手不足を補う役割を押しつけては働き過ぎを防げない。

 男性は、警備会社の社員として私立高校の警備を担当していた。今年二月、夜間勤務中に急性心筋梗塞を発症し二カ月後に亡くなった。遺族は長時間労働による過労が原因だとして労災申請をした。

 驚いたのはその長時間労働の実態だ。代理人の川人博弁護士によると、同僚が一人休職となり男性ともう一人の二人で交代勤務をしていた。帰宅せず三日間の連続勤務もあった。仮眠は規定より短くしか取れず休憩時間もわずかな時間しかなかったようだ。

 男性は年金が月十四万円ほどで家賃も払う必要があった。家族もおり生活のために六十五歳以降も引き続き働く道を選んだ。

 しかし、この働き方は高齢者に限らず過酷だ。男性は生前、人員を増やすよう会社に要望していたという。それだけに改善がされなかったことは悔やまれる。

 総務省の八月の労働力調査では、働く六十五歳以上はパートなどを含め八百七十二万人で就業者の13%を占める。高齢者の四人に一人が働いており、社会を支える重要な働き手だ。

 高齢者の職場は人手が不足している業種に多い。この男性のように生活のためにフルタイムで働く必要から労働条件に問題があっても我慢せざるを得ないケースもあるだろう。いきおい過重な労働を強いられかねない。

 川人氏は「とりわけ六十代後半から七十代前半の過労問題の相談が増えている」と話す。高齢者は人手不足の穴埋め人材ではない。

 発足した第四次安倍改造内閣は六十五歳以上への継続雇用年齢の引き上げなど高齢者の就労促進を掲げた。活躍の場を広げることは重要だが、やりがいを持って健康に働けることが前提になる。

 体力が落ちる年代。持病を抱える人もいるはず。企業は短時間勤務や週二日勤務など働き方に配慮してほしい。政権も経済成長に前のめりになるあまり過労死を放置することは許されない。

 もうひとつ気になることがある。男性は朝の時間帯に保護者からの電話応対もしていた。多い日は一時間で三十件もあったという。本来は教職員の業務だが、教員の多忙が背景にあるようだ。働き方は連鎖する。その見直しは社会全体で取り組むべきだ。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報