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【社説】

元徴用工判決 日韓摩擦減らす努力を

 韓国最高裁が元徴用工裁判で原告の請求権を認め、日本企業に賠償を求める初の確定判決を出した。日本政府と対立する結論だが、摩擦がこれ以上拡大しないよう、関係者の歩み寄りを促したい。

 原告は朝鮮半島の植民地時代に強制労働をさせられたとして補償を求め、日本国内で提訴。敗訴したため、韓国で裁判を起こした。

 日本政府は、元徴用工の対日賠償請求権問題に関しては一九六五年の日韓国交正常化に伴って結ばれた請求権協定で「完全かつ最終的に解決した」ことを確認している。

 ただ、日本政府は国会答弁で、個人が賠償を求める「請求権」自体は残っているとも説明してきた。個人が賠償を求めて提訴はできるが、日本側には賠償責任はない、との考え方だった。

 韓国の政府、司法も同じ解釈を取っていた。ところが韓国大法院(最高裁)が二〇一二年五月、元徴用工の請求権を初めて認める高裁差し戻し判決を言い渡し、問題が再燃した。

 この日の判決も、「賠償請求権は、協定には含まれない」と踏み込んでおり、日本側からは、請求権協定を否定したものだとの批判が出ている。

 河野太郎外相も確定判決を受けて、外務省に韓国の李洙勲(イスフン)駐日大使を呼び、「国際社会の常識では考えられないことが起きた」と抗議した。韓国政府は司法の判断に従う方針だが、日韓関係を踏まえた慎重な対応を求めたい。

 一方で、元徴用工による裁判は新日鉄住金、三菱重工業など約七十社を相手取って計十五件にのぼり、原告は千人近くになる。

 戦後七十年以上たって、いまだに訴訟が続く背景も考えたい。過酷な環境で働かされたことを法廷で証明し、謝罪を受けたいという原告の切実な思いがあるのだ。

 原告の一人は「一日十二時間働かされた」と証言した。国家間の協定の陰で後回しにされてきた心の痛みを、無視できるだろうか。

 日韓間では、最近も自衛艦旗や、竹島問題をめぐりぎくしゃくが絶えない。しかし、北朝鮮問題をはじめ両国の協力は欠かせない。

 原則論をぶつけ合うだけでなく、原告と被告企業をつなぐ接点はないか、政府レベルでも探る必要があるだろう。例えば基金をつくって賠償をする方式も、専門家の間で論議されているという。

 摩擦を拡大させず、冷静に和解策を探ってほしい。

 

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