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【社説】

平成とスポーツ 現状維持は淘汰される

 平成のスポーツ界はインターネットやデジタル技術の普及などで大きく様変わりしました。著しい変化の中で、未来を見据えた進化を求めたいものです。

 平成という時代の三十年間のスポーツ界を振り返れば、最も変化したのはネット時代の到来と、スポーツビジネスの台頭かもしれません。

◆ネットとビジネス

 一九九〇年代後半から普及したインターネットは、米国や欧州のスポーツの試合や記録、動向などをリアルタイムで知ることが可能となり、世界との距離を一気に縮めました。さらにデジタル放送によるテレビの多チャンネル化で、あらゆる海外スポーツの映像が日本でも見ることができるようになり、競技の普及や選手の技術の向上につながりました。

 ここ数年はスポーツ専門のネットテレビも進出し、どこにいても好きな時にスマートフォンなどの携帯端末で試合を見られるようになり、この傾向はますます広がりを見せています。

 今後は通信スピードが一層高速化される第五世代(5G)移動通信システム技術の発展で、視聴者が自分の好きな視点から試合を見られるようになるなど、想像もつかないスポーツ観戦の世界が訪れると思われます。

 スポーツビジネスも拡大しました。八四年ロサンゼルス五輪で放映権料の入札制や、スポンサー企業を原則一業種一社とすることなどが取り入れられると、限られた椅子を巡って競争が激化しました。米テレビ局NBCが二〇二〇年東京五輪までの夏季、冬季計四大会で支払う放映権料は総額で四千億円を超え、スポンサー企業もトップレベルで数百億〜数千億円を国際オリンピック委員会(IOC)に支払っているとされます。

◆プロ化の波が覆う

 IOCはこれらのお金をスポーツ発展途上国への用具提供や指導者の派遣などにも充て、アフリカなどの国や地域から優れたアスリートが輩出されるようになりました。その半面、テレビ局やスポンサー主導の大会となる傾向も顕著になり、酷暑の真夏に東京五輪を開催せざるを得ないなどの問題も浮上しました。

 ビジネスの波は選手にも及びます。一九九二年バルセロナ五輪で米プロバスケットボールリーグNBAの選手が米代表のドリームチームを結成して圧倒し、プロ化の波が一気に五輪全体を覆いました。選手は各自がスポンサー契約を結ぶなどプロ選手として参加するようになり、かつてアマチュアの聖域とされた面影は消え去ったのです。

 日本も九三年にJリーグが創設されると、地殻変動がスポーツ界に起きました。企業スポーツだったサッカーは、それまで活動資金も施設も企業におんぶにだっこでした。それが独立採算のプロチームとなって選手の意識は変わり、日本代表チームもワールドカップ出場が当たり前とされるほど強くなりました。

 この動きが刺激となり、現在はバスケットボールのBリーグ、卓球のTリーグなど、プロリーグが次々と誕生しています。

 ただ、教育の一環である体育を土壌に育ってきた日本のスポーツ界には、いまだにスポーツの事業化を推し進めることに拒否反応を示す人もいます。それらの人が地位や名誉を重んじてスポーツ団体の要職にしがみつき、現状維持を良しとして進化を阻み、時には不正が横行してパワハラ問題なども起こっています。

 一年後に東京五輪・パラリンピックが開催される今年、スポーツ界が憂慮していることの一つに「二〇二一年問題」があります。大会が終われば、それまでの助成金や補助金が減少、あるいは打ち切られ、国民の熱も冷めてしまい、活動がおぼつかなくなるスポーツ団体が相次ぐのではないかという危機感です。

 現状維持にとどまっている限り、この危機から逃れることはできないでしょう。一時は人気低迷に苦慮したプロ野球も、今では各球団がかつての「試合を見せればいい」という考えから「球場に来ることを楽しんでもらう」という発想に転換しました。そしてアトラクションや応援グッズの開発、スタンドの改装、ホームページの充実などに工夫を凝らし、史上最多を更新する観客動員数を昨年も記録しました。

◆東京五輪の先を見て

 これからもネットやスポーツビジネスは勢いを増し、猛スピードで変化していくことは間違いないと思われます。乗り遅れれば淘汰(とうた)されるのを待つばかりです。新たな時代を迎える今年は、東京五輪・パラリンピックの先も見ながら準備し、行動する。その中で、人も社会も磨かれるのです。

 

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