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【社説】

技能実習生 人権守れぬなら廃止に

 法令に反(はん)した大手企業が外国人技能実習生の計画認定を取り消された。自殺や過労死などの悲劇も相次ぐ。新在留資格が四月から始まる。もはや劣悪な環境下に若者を置く制度は不要であるはずだ。

 三菱自動車は愛知県内の工場で、溶接作業を学ばせるはずの実習生に部品の組み立てをさせていた。実習計画とは異なるので、技能実習適正化法に基づき、同認定を取り消された。

 パナソニックは富山県内の工場で社員が過労自殺を起こした。違法な時間外労働とされ、労働基準法違反の罰金刑が確定した。労働法令に反した企業は実習生の受け入れができないため、やはり同適正化法により取り消しとなった。

 日本の大手企業がこんなペナルティーを科されるのは異例だが、各地の実習生の労働環境が過酷であるのはもはや常識である。何度も失踪事件は起きているし、二〇一〇年から一七年の間に実習中の事故や自殺、病気で計百七十四人が死亡している。

 金属切断機に頭を挟まれたり、漁船が転覆して海に投げ出されたり…。心筋梗塞や心臓性突然死など過労を疑わせる事例もある。中国やベトナムなどから来た若者たちが溺死や凍死、自殺するとは、過酷な環境下で労働を強いられている証左であろう。

 少なくとも本来の技術を身に付ける実習ではなく、単純労働者として酷使されているのが現状であろう。しかも、最低賃金以下の報酬しか渡さずに…。

 四月導入の新制度で「特定技能1号」の在留資格には、初年度に受け入れる最大約四万八千人のうち、55〜59%を実習生から移行させる予定という。農業などではほぼ100%が実習生からの移行とみられている。

 実習生がブローカーに多額の借金を背負って来日するのも、返済する見通しがあってだ。つまりは国際貢献の名目下で単純労働をしている。新制度では外国人の単純労働者を受け入れるから、現実的には実習制度存続の意味は見いだしがたくなろう。

 とくに労働の最中に命を落とすのは異常だ。人として扱われていないとの疑念さえ湧く。少子化で人手不足というが、日本人がやらなくなった業務を外国人の実習生が負ったりする。

 人権が守られぬ世界にアジアの若者を放り込むのは犯罪的ですらある。政府は外国人の労働者政策を練り直してほしい。

 

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