脱原発を推し進めるドイツが、隣の原発大国フランスにあまりもの申さない事情を、昨年の記者会見でシュタンツェル独駐日大使に尋ねたことがある。
「各国の国家判断を尊重するドイツの考え方に変わりはありません」。内政干渉を極力避ける外交的な模範解答だった。
その基準に照らすと、今春の大統領選挙に再出馬を表明したサルコジ仏大統領に対する最近のメルケル独首相の支持表明はどう受け止めればよいのだろう。
典型的な例が、今月ブリュッセルでの独仏首脳会談後の発言だ。「サルコジ大統領は私の選挙を支持してくれた。今こそお返しをしたい」。今後、選挙戦で応援舞台に立つこともあるのだという。
サルコジ氏の対抗馬の社会党オランド候補は、年金や原発政策で現政権との対立姿勢を鮮明にしており、ドイツ主導で纏(まと)めてきたユーロ危機対策の再検討を掲げている。メルケル首相にしてみれば、これまでの努力の卓袱台(ちゃぶだい)返しに等しい。
欧州統合プロセスは、独仏両国が牽引(けんいん)する列車によく喩(たと)えられる。英国はユーロに関し、きっぱりと乗車拒否を宣言した。いま、親しい相棒運転士をも失いかねないメルケル首相の気持ちは分かる。
しかし、急がば回れという。まずは列車の行き先を明示する方が先決ではないか。目的地が定まってこそ、取るべきルートも定まろう。 (安藤 徹)
この記事を印刷する