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【私説・論説室から】

既視感のあるシリア攻撃

 シリアへのミサイル攻撃の理由について、トランプ米大統領は「化学兵器の拡散と使用を防ぎ、阻止する米国国家安全保障上の重要な利益」と説明した。一方で、「かわいらしい赤ん坊まで野蛮な攻撃で殺害された」とも強調した。安全保障面だけでなく、人道的な動機もあったようだ。大統領の長女、イバンカ氏が化学兵器使用に衝撃を受け、攻撃の決断を促したともされている。

 既視感がある。一九九九年のユーゴスラビア空爆だ。ユーゴのセルビア人政権は、コソボ自治州でアルバニア系住民を追い出して迫害した。これを「民族浄化」とみた米欧の軍事同盟、北大西洋条約機構(NATO)は、ロシアの反対で国連決議を経ることなく、ユーゴ空爆に踏み切った。誤爆もあった。

 ナチスへの反省から軍事行動に慎重だったドイツも戦闘機を派遣した。平和主義を掲げていた緑の党出身のフィッシャー外相は「アウシュビッツを繰り返してはならない」ことを理由に挙げた。人道的介入だった。コソボ紛争に先立つボスニア・ヘルツェゴビナの内戦時から、「セルビア人=悪」という国際世論が作られていたさなかだった。

 正義の味方でいたい気持ちは理解できるが、さて、どうか。現地での検証ができないまま、まず悪役ありきでたたく。加害者を懲らしめることはできる。しかし、それで、被害者の救済はどこまで進むのか。(熊倉逸男)

 

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