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【私説・論説室から】

こんなところにも忖度か

 「いやはや、これまた忖度(そんたく)か?」−内閣府が先月中旬に開いた経済財政白書の説明会で記者席から、こんな声が漏れた。

 この白書の前身は「もはや戦後ではない」という流行語を生んだ「経済白書」だ。官庁エコノミストが日本経済の実相に切り込み、時に鋭い提言は高く評価されたものだった。

 ちなみに「もはや戦後ではない」のフレーズは誤った解釈が多いことでも有名である。

 「すでに戦後復興を果たし、新しい時代に入る」といった前向きな宣言ととらえるのは間違い。正しくは、成長をけん引してきた復興需要がなくなるため「これからは厳しい時代になる」との意味だった。もっとも、この見通しは大外れで高度成長を果たしたのだから誤解が多いのも無理からぬことだろう。

 そんな伝統ある白書だが、最近は政権の顔色をうかがうような調子が目立つ。政策を正当化し、負の部分は避けているかのようだ。

 今回も、タイトルからして「技術革新と働き方改革がもたらす新たな成長」である。

 要約すると、景気回復は戦後三番目の長さで企業収益も最高を更新。人手不足はバブル期を超え、賃金上昇の鈍さと生産性の低さが課題だが、政府の働き方改革で問題は解決へ−こんな楽観的な分析で逆に心配になる。

 内閣人事局ができ、官邸が中央省庁人事を掌握した。恐怖政治に官僚はひるむ。「もはや戦前だ」−まさかと思いたい。 (久原穏)

 

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