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【私説・論説室から】

中学生を担任する…とは

 一冊の本がメール便で届いた。差出人を見ると、娘の中学時代の恩師ではないか。「どんな子でも心を開く」と、今でも敬愛してやまない「高T(たかティー)」こと高原史朗先生。定年を控え、次世代の先生に向けて書いたという。

 『中学生を担任するということ 「ゆめのたね」をあなたに』(高文研)。

 さいたま市立中学校で担任した三年生のクラスを主舞台に人間模様を描く。けんか、保護者の殴り込み、不登校、高校受験…。大小さまざまなトラブルや葛藤が、高Tの働きかけを介して成長の糧へと転じていく。

 昼休みの教室での取っ組み合い。二人をつまみ出すのではなく、なぜそうなったのかを全員を集めて確かめる。止めようとした、見ていた、避けた…。めいめいが自らの言動を顧みるうちに、人ごとではないと悟る。

 トイレが壊された。高Tは教室で語りかける。ドアを蹴破るという気持ちを放置したら次は誰かを殴ったり、自分を傷つけたりするかもしれない。ドアよりも大事なその子に力を貸したい。他クラスの生徒が名乗り出た。

 学校現場で強まる不寛容と自己責任の風潮を心配する。子どもは問題を起こしながら育つもの。問題行動には訳がある。それはつながりと信頼を結ぶチャンス。「一番苦しんでいる生徒が大切にされる学校は、誰もが大切にされる学校に通じている」の言葉は、今の世の中への警鐘でもあるだろう。 (大西隆)

 

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