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【私説・論説室から】

吉田調書を読み直す

 福島第一原発事故当時、所長だった吉田昌郎さんが政府事故調に話した記録、いわゆる吉田調書が公表されて三年になる。

 初めて読んだとき、驚いた部分があった。

 吉田さんは、一九九一年に第一原発で溢水(いっすい)事故があり、非常用ディーゼル発電機(DG)が使えなくなったと話して「(東日本大震災を別にすれば)日本の事故の中で一番大きい事故だと、私は思っているんです」と述べた。私は科学記者だったが、そんな重大な事故があったことを覚えていなかった。

 東電に損害賠償を求めている福島県の生業(なりわい)訴訟原告弁護団の馬奈木厳太郎(まなぎいずたろう)弁護士から「東電は発表していない」と聞いて、また驚いた。発表は「建屋で海水の漏洩(ろうえい)があり、原子炉を手動停止した」という内容で、事故の評価はレベル0。覚えていないはずだ。

 吉田さんは所長の前は原発の中長期的な課題に対応する原子力設備管理部長だった。調書を読み直すと、努力はしたが、費用などがネックになって十分なことはできなかったらしい。悔しさがにじんでいる。

 私は、費用よりも最初にトラブルを隠したためではないかと考える。調書が語る教訓は「あったことをなかったことにしてはいけない」なのだ。それは原子力に限らない。

 九一年の事故は弁護団のホームページに公開されている第29準備書面、第31準備書面に詳しい。 (井上能行)

 

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