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【私説・論説室から】

「共生」という付加価値

 「いらっしゃいませ」。店内に明るい声が響く。東京・銀座二丁目のスワンベーカリー銀座店。焼きたての新商品「きなこパイ」と「焦がし醤油(しょうゆ)のツナコーン」をトレーに載せてコーヒーを注文した。四百七円とは財布に優しい。六月に開店二十周年を迎える。

 障害者に働く喜びと幸せをと、クロネコヤマトの宅急便を創始した故小倉昌男氏が乗り出したパンの製造・販売事業の一号店。知的障害や精神障害のある十人を含めて従業員約二十人で切り盛りしているという。

 かつて共同作業所の月給が一万円足らずと知り、驚いた小倉氏。その衝撃が月給十万円以上を目指す福祉ビジネスの原動力となった。年間のパート契約を結び、時給は最低賃金の九百五十八円(東京)。仮に週三十五時間勤めれば、手取りは十二万円余りという。

 ヤマトグループを後ろ盾とするスワンの直営四店と、ロイヤルティー不要のフランチャイジー二十二店が全国で踏ん張る。経営環境は厳しく、待遇改善をはじめ課題は山積みだが、約三百四十人の障害者を支えている。

 小倉氏が唱道したヤマト運輸の理念は「世のため、人のため」「サービスが先、利益は後」。経営者の視点からノーマライゼーションを実践した。もっとも、資金力の乏しい中小企業では難航しがち。ならば消費者が「共生」の付加価値のあるモノやサービスを選ぶ。倫理的消費で後押ししたい。(大西隆)

 

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