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【私説・論説室から】

AIと障害者

 「完全な人工知能(AI)の開発は、人類の終焉(しゅうえん)を意味するかもしれない」−。三月に七十六歳で死去した英国の物理学者スティーブン・ホーキング博士は、野放図なAIの展開競争に警鐘を鳴らし続けた人でもあった。

 将来には人知を凌駕(りょうが)し、爆発的な速度で自律的に進化すると予測されるAI。暴走して人類を危機に陥れないよう、一度立ち止まり制御策を講じておくべきだと訴えていた。

 筋萎縮性側索硬化症と闘いながら幅広く思索を深めた博士に、ぜひとも尋ねたかった。

 古代ギリシャの哲学者プラトンに、すでにその萌芽(ほうが)が見られる優生思想。人間の価値に優劣の序列をつけ、不良な存在を排除する差別思想を、自由、平等、民主を基調とするはずの現代人でさえ克服できないのはなぜか。

 優生思想に染まったAIが現れたら仕事を奪われるどころか、人間は全て「障害者」として排斥されるだろう。科学技術の進歩とは人間の「無力化」だったことに気づく。

 日本では今、障害者からの障害児の出生を防ぐためとして、かつて国家が強いた不妊手術の非人道性を問う法廷闘争が始まった。それは同時に、健常者からの障害児の出生を阻止する出生前診断と選択的妊娠中絶、さらには遺伝子改良を巡る論議も高めるだろう。

 女性の自己決定権と障害者の生存権、生命倫理、死生観すら絡んだ難題。その解決をAIに委ねてしまうのは恐ろしい。 (大西隆)

 

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