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【私説・論説室から】

ホーキング博士の会見

 車いすの物理学者、ホーキング博士が先月、亡くなった。来日した際の記者会見に出たことがある。高名な研究者の印象に残るような質問をしようと勇んで出掛けた。

 車いすに崩れるように座った博士は、すでに声を失い、合成音声で答えた。はじめのうちは意外なほどスムーズに答えが返ってきた。何人目かで、答えが止まった。

 どうやら「来日の印象は」といったような質問には事前に答えを用意していたようだ。想定外の質問が出て、博士はアルファベットを一文字、一文字選んで回答を作っていた。私の席からは真剣な横顔が見え、誠実さが伝わってきた。一度も指名されなかったが、手を挙げるのをやめた。

 英BBC放送の「世界的な物理学者が残した数々の名言」という記事を没後、インターネットで読んだ。その中に中国・人民日報のインタビューがあった。

 質問は「安楽死について」。

 「患者には、もし望めば自分の命を終わらせる権利があるべきです。しかし、私は(安楽死は)大きな過ちだと考えています。どんなに人生がひどいように思えても、いつだってできることはあり、うまくやることもできる。命があれば希望はあります」。非常識な質問にみえたが、すばらしい答えを引き出している。記者は質問するのが仕事と、あらためて感じている。 (井上能行)

 

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