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【私説・論説室から】

「背番号0」生んだトキワ荘

 投げても打っても活躍する大谷翔平選手は、子供たちにとって夢だ。その姿を見ていると、往年の少年野球漫画「背番号0」を思い起こすことがある。

 万年補欠だった「ゼロくん」が家族や友人に囲まれて成長していく。成功と失敗を繰り返しながら前向きに歩む主人公が子供心に身近に感じた。大谷選手は野球が好きで仕方がないゼロくんの顔に、どことなく似ている。

 描いたのは寺田ヒロオ氏。かつて手塚治虫氏、石ノ森章太郎氏、藤子不二雄氏らが青春時代をすごした東京都豊島区のアパート「トキワ荘」に一九五〇年代に住み、「スポーツマン金太郎」などの代表作がある。

 トキワ荘の漫画家たちにとって寺田氏は兄貴分だった。デビュー前の赤塚不二夫氏には「これで食いつなぎながら漫画を描くことに専念しなさい」と、なけなしの金を渡し、後の「おそ松くん」誕生につながったとされる。六〇年代後半からの劇画ブームの中でも夢や友情をテーマにした子供向け漫画にこだわるひたむきさを持ち続け、九二年に六十一歳で他界した。

 自らも野球選手だった寺田氏が愛したトキワ荘は、復元工事が今年十月に着工する。老朽化で八二年に解体された場所から徒歩約三分の敷地に、二〇二〇年三月の開設を目指す。純粋な野球少年を生み出した原点に、早く足を踏み入れてみたい。 (鈴木遍理)

 

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