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【私説・論説室から】

ためらわずにスイッチを

 実家の居間に初めてエアコンが取り付けられたのはいつごろだったろう。壁掛け型の室内機と室外機が分かれたセパレートタイプを三菱電機が発売したのは一九六八(昭和四十三)年。とすると中学生だったろうか。

 勢いよく吹き出す冷気に大喜びしたが、それもつかの間。大正生まれのおやじは体が冷えるといって嫌がるようになる。電気代がもったいないという主婦(母)の無言の圧力もあり、冷気を堪能するには至らなかった。

 危険な暑さが続いたこの夏、自宅にエアコンがあるのに使わず、熱中症で亡くなる高齢者が相次いだ。使わない理由は「体が冷える」と並んで「もったいない」が多いという。

 実際、夏場にエアコンを使いすぎると、電気代の請求が前月の二倍くらいに跳ね上がってびっくりさせられる。

 夏が暑いのは当たり前。エアコンは贅沢(ぜいたく)。電気代がもったいない−わが世代より上には、使用をためらう意識が染み込んでいる。まして年金暮らしなら月千円、二千円の出費増でも痛い。我慢してしまうのだろう。

 ただ来年以降もこの暑さが続くようなら、エアコンは贅沢品ではなく必需品。九州電力が高齢者家庭の夏の割引プランを工夫したように、電力会社、自治体、政府による電気代の助成策が必要になるのではないか。

 お年寄りが、ためらわずにスイッチを押せるように。 (安田英昭)

 

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