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俳人夢二 直筆 最後の句 初公開へ

日記帳の右側のページに記された夢二最後の俳句。病床にあるのを示すように筆致は乱れているが、読み取れる

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 美人画で一世を風靡(ふうび)した大正ロマンの代表的画家、竹久夢二(一八八四〜一九三四年)は画業のかたわら俳句に取り組んだ。死期を悟って詠んだ最後の句の直筆が、群馬県渋川市の竹久夢二伊香保記念館(木暮享(すすむ)館長)に保管されていることが分かった。同館では六月、この直筆を初公開する予定。夢二芸術の全体像を捉える貴重な機会となりそうだ。 (三沢典丈)

 死に隣(とな)る眠薬(ねむりぐすり)や蛙なく

 黄ばんだ日記帳の一ページに書き込まれた十文字。亡くなる四カ月前の五月十七日に書かれた。筆致は乱れているが、五七五で行替えされ、この世に残そうという強い意志が感じられる。

 「睡眠薬がなければ寝られない死のふちに立つ状況と、生命力あふれるカエルの声を対比させ、自らの過去を振り返る光景が目に浮かぶ。活字と違い、直筆からは本人の心境がいやでも伝わってきます」。木暮館長は目を輝かせる。

 夢二は独特の「夢二式」と呼ばれる美人画で人気を集め、多くの挿絵や表紙画のほか、本の装丁や広告のデザインなども手掛けた。

 文筆家としても詩、短歌、童話などに才能を発揮。中でも詩「宵待草」は、曲を付けた楽譜が大ヒットし、全国的な愛唱歌となった。

 俳句は、夢二研究家の長田幹雄さん(一九〇五〜九七年)が収集、整理した資料を、長田さんに師事していた木暮館長がまとめ、九四年に『夢二句集』として発刊。夢二が「平民新聞」の挿絵画家だった一九〇五年から、結核のため滞在していた長野県内の療養所で三四年九月に死ぬまでの間の、この最後の句を含む千二百五十六句を収録した。

 長田さんの死後、資料は同館に寄贈されたが、一万数千点と膨大なため「この日記帳は見たことがなかった」(木暮館長)。今年が夢二の生誕百三十周年に当たることから書庫を調べていたところ、直筆を見つけた。

 木暮館長は、夢二が伊香保滞在中に女性の帯に書いた俳句「春寒し恋は心の片隅に」を読んで感動し、八一年に同館の開館に踏み切った。「夢二の絵はどこか無声映画の一場面のような趣があり、俳句はそこに音声を付与する重要な役割があると思う。絵と俳句を両方味わい、多彩な表現者・夢二の魅力を知ってほしい」と話している。

 

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