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根幹部分 変わらず 新国立設計案 建築家・槇さんら批判

 日本スポーツ振興センター(JSC)が二十八日、まとめた新国立競技場の基本設計案。新競技場の規模縮小を一貫して求めてきた建築家の槇(まき)文彦さんらは「根幹部分は何も変わっていない。これだけ多くの人が反対しているのにまったく耳を貸さないのは市民社会のあり方として問題だ」などと批判した。 

 基本設計案について、槇さんは「景観やコストについての異議申し立てを十分に考慮した案とは思えない。人の目線でどのように見えるのかといった情報も不十分だ」と指摘した。設計案では高さを七十五メートルから五メートル引き下げたが「それでも一番高い所で七十メートルあり、景観問題が解決したと思えない」と話した。

 現時点での総工費が示されていない点も「基本設計では概算は必ず提示するもの。これでは承認できない。完成後の維持管理費の見通しも見当たらず、非常に不完全な内容だ」と述べた。その上で、「懸案の屋根については、開閉機構や遮音性能、芝生への日照影響などを知りたいが、基本設計案だけでは詳しく読み込めず、有効性も判断できない。これを公開したからといって、建設計画を進めてよいという議論にはならない」と断じた。

 作家の森まゆみさんは「従来の計画通りの内容。世論の批判をかわすために高さを五メートル下げただけではないか」と批判。「計画案に市民が意見を述べたり、公開の場で議論することもできず、計画が固まった段階で一方的に『説明会を開く』というのは昔ながらの上から目線のやり方だ」と指摘した。

 新競技場建設をめぐっては槇さんや森さんらが規模の見直しを主張。今月には昨年のプリツカー賞を受賞した建築家伊東豊雄さんが独自の改修案を公表した。

 ◇ 

 東京都の舛添要一知事は二十八日、新国立競技場の基本設計案が了承されたことに「着実な整備を求めるとともに、この地域にふさわしい公園のあり方やまちづくりを引き続き検討していく」とのコメントを発表した。

 一方、建築家らから規模縮小や現競技場の改修案といった意見が出ていることを念頭に「建設にあたっては対外的に十分に説明を果たしてもらいたい」と注文も付けた。

◆動きだしたら止まらぬ体質

<解説> 今回の新国立競技場の基本設計案も、多くの建築家や有識者が訴えてきた問題提起に応える内容にはならなかった。この設計を基に七月には現競技場の解体が始まる。そうなればいよいよ後戻りはできない。

 昨秋以降、再三示された景観やコストをめぐる訴えは具体的で説得力もある。だがJSCや国は「招致段階からの計画変更は国際公約に反する」「時間の余裕がない」などとしてほとんど顧みなかった。

 日本の公共工事は「動きだしたら止まらない」と言われてきた。過去の計画を軌道修正できず、国や自治体は自らの財政を痛めるという失敗を繰り返してきた。今回の経緯にも、その硬直体質を感じる。

 一昨年、流線形のデザインを決めた国際コンペに際し、JSCの河野一郎理事長は「新しいスタジアムを新しい創り方で」と意思表明し「みんなでつくりあげていくスタジアムにしたい」とコメントした。「志」はどこに行ったのか。

 この日の有識者会議では今後、基本設計案の説明会を開く方針を示したが、問題提起を受け入れる場にはなりそうもない。本当に「新しい創り方」を目指すなら、かたくなな姿勢を改めるべきだ。 (森本智之)

 

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