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「新国立」懸念を封印 JSC議事録

2020年東京五輪・パラリンピックのメーンスタジアムとなる新国立競技場のイメージ=日本スポーツ振興センター提供

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 二〇二〇年東京五輪の主会場として計画される新国立競技場(東京都新宿区)のデザインコンペの審査経過が、本紙が情報公開請求で入手した資料で判明した。審査では景観や多額の建設コストなど、ザハ・ハディドさんのデザインをめぐり、後にクローズアップされる懸念が既に指摘されていた。だが、議論は深まらず、審査の最終盤には「懸念が先行するのは避けたい」などとして、マイナス評価の公表を控えるよう求めるやりとりが行われた。 

 「この中ですと、圧倒的に二番か十七番なのでしょうから、二番か十七番かを決めましょう」

 三作品で議論がもつれた終盤、審査委員長の安藤忠雄さんが切り出した。二番のアラステル・レイ・リチャードソンさん、十七番のハディドさんを残し、妹島(せじま)和世さんの作品を落とすという宣言だった。

 直後、最終判断を委ねられた安藤さんは「日本の技術力のチャレンジという精神から十七番がいいと思います」と即答した。

 だが、審査の過程でハディドさんの作品に否定的な意見も寄せられていた。

 「特異な形態なので、賛否が巻き起こるだろう。神宮外苑全体の景観としては、異物が挿入された感は否めない」「スケール感や街との連続の仕方など、周辺環境との関係性を検討する必要がある」

 二次審査で各委員が提出した審査資料では、複数の委員が景観への懸念を表明した。実際の審査でも日本スポーツ振興センター(JSC)の河野一郎理事長が「隣に(聖徳記念)絵画館がありますので、周辺についても考える必要がある」と問題提起。別の委員から「絵画館の前からスタジアムがどう見えるのか歩いたが、(最終候補の)どの案を採用しても景観上は邪魔」との意見も出た。

 ハディドさんの作品で特に問題視されたのは、新競技場から延びるスロープが公募条件の建設範囲を大きくはみ出し、北側の首都高速やJRの線路をまたいでいたことだ。

 首都高やJRと調整が必要になり、委員は「想定する工期では無理」などと指摘。最終的にスロープは短くされたが、この時は「(スロープは)重要なコンセプトの一つ」「これを外すとこの提案はコンセプトが変わってしまう」と疑問の声が上がった。二本のアーチで全体を支える構造も「かなりコストはかかる懸念はある」と指摘された。

 一方で「ダイナミズムは捨てがたい」「オリンピックに必要なインパクトという観点では断然」と、迫力あるデザインを絶賛する意見も根強かった。

 最終的に安藤さんがハディドさんを選んだが、その直後、河野理事長は「いろいろ懸念が先に出てきてしまい、本来的にわれわれが意図しない方向に行ってしまうのは避けたい」と発言。選考結果の公表に「工夫が必要」と述べた。

 これに安藤さんも「発表の仕方としては強いインパクトを持ってこれを推すんだと言わないと、(略)この委員会で少しでも揺れたことで、ネガティブに受け取られるのは本意ではありません」と応じた。他の委員から異論はなかった。

 

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