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「新国立」かさむ建設費 巨大アーチ開閉式屋根、難工事

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 2020年東京五輪の主会場となる新国立競技場の建設には、技術的難題が山積している。独創的な外観デザインを支える巨大なアーチ構造や開閉式屋根(遮音装置)などはいずれも世界初の難工事という。事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)は「ノウハウを生かしたい」と、実施設計の段階で施工会社を選ぶことを決めたが、設計を修正しない限り、建設費は膨らみそうだ。 (森本智之)

 JSCは八月十八日、工区をスタンド部分と屋根部分に分け、施工会社選定をプロポーザル(提案)方式で行うと公示した。技術提案を審査し、十月中に決定。選ばれた会社は八月に始まった実施設計の検討に加わってとりまとめる。工事請負契約は、来年六月をめどにあらためて結ぶ。

 設計段階から施工会社を選ぶのは異例だ。背景には、高い技術力を持つ施工会社の協力なしには計画通りの競技場が建てられない、という危機感がある。

 建設のネックになっているのは、幅三百七十メートルもの巨大な「キールアーチ」や、サッカーグラウンド二面分の一万五千平方メートルに及ぶ開閉式の屋根、八万人収容のスタンド、競技種目やコンサートなどに応じて移動する可動席などだ。JSCは「規模や構造の複雑さなどで過去に例がない」と説明。建設会社向けの資料でも「難易度が高く、十分な検討を行い、課題を解決する」必要を指摘した。

 幕張メッセや東京国際フォーラムの構造設計を担当し、新競技場のデザインコンペにも参加した構造設計家の渡辺邦夫さんは「新競技場の形は構造的には全く非合理だ。それを実現しようとしていろいろな所に無理が生じている」と指摘。「ゼネコンの力があれば造れると思うがコストは跳ね上がるだろう」と話す。

 新競技場の建設費は、一時は三千億円と見積もられたが、規模を縮小するなどして削減。基本設計では千六百二十五億円となった。だが、これは昨年の単価による概算だ。今春の消費税増税分を含めるだけでも単純計算で四十六億円増える上、建設資材や人件費も高騰。渡辺さんは「構造の問題は手付かずで、先送りされてきた。予算内で収めるには大幅な設計変更が必要になるのでは」とみる。

 JSC新国立競技場設置本部の阿部英樹施設部長は「設計者だけで無理にやれば工期が延びたり、工事請負契約の段階で入札不調となるリスクもある。もともと『日本の技術力を世界に示す』としてザハ・ハディドさんのデザインは選ばれており、技術的なチャレンジは当然。課題は必ずクリアできる」と話している。

◆計画変更 IOCも理解

 新国立競技場の計画見直しについて、JSC側は「招致段階で示した“国際公約”に反する」と反発してきた。だが、〇八年の北京五輪では経費節減のため、主会場「鳥の巣」の開閉式屋根を取りやめるなど、招致段階の計画を後に見直した例は過去にある。今回の東京五輪でも建築費の高騰などを理由に、国立を除く会場計画の見直しを東京都が進めている。

 国際オリンピック委員会(IOC)は行動計画アジェンダ21で、既存施設を最大限活用し環境への影響を弱める努力をすることを求めている。これまでもこうした考えに沿う見直しに理解を示してきたといえる。

 五輪の主会場として使うには六万人の収容人員など条件があるが、八万人もの規模や、開閉式屋根などは必要ない。この問題については、IOCのトーマス・バッハ会長も十日までの共同通信のインタビューに「将来の日本のイメージも視野に、日本の人々が決めること」と話している。

 一方で、独創的な外観はイラク出身の建築家ザハ・ハディドさんのデザイン。デザインコンペの募集要項で、JSC側はデザイン変更の要請をできることになっている。建設費の削減などを理由に規模を約二割縮小した結果、既に外観デザインは当初から大きく変わっているが、ハディドさん側は理解を示している。

 

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