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【新国立競技場問題】

「このままでは負の遺産」 反対派あらためて「見直しを」

新国立競技場について意見を交わす建築エコノミストの森山高至氏(奥左)と作家の佐山一郎氏(同右)=29日、東京都渋谷区で

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 二〇二〇年東京五輪・パラリンピック大会主会場の新国立競技場について、下村博文文部科学相は二十九日、現行デザインを維持したまま建設を進めると正式表明した。だが総工費は当初の予定を大幅に上回り財源は不透明なまま。工期も予定を二カ月超過することが新たに分かり、計画に反対してきた人たちはあらためて見直しを求める声を上げた。 (森本智之)

 「下村大臣は『ラグビーワールドカップ(W杯)に間に合わないから仕方ない』と言っているように聞こえる。『仕方ない』というのはご自身がこの計画に問題があると認めている証拠だ」。基本デザインをまとめたザハ・ハディド氏の案を変更するよう求めていた建築家の槇(まき)文彦氏は憤る。

 下村氏は二十九日午前、記者団に「(総工費の)二千五百二十億円はやはり高い」と認めつつ「関係者に会って交渉したが、ラグビーW杯に間に合わせるため、大幅な変更は残念ながら間に合わない」と話した。

 下村氏は槇氏にも直接面談した。槇氏は「こちらはW杯に間に合うと工程表を示した。それでも間に合わないと考えるなら、W杯を新国立で行うことをやめればいい」と反論。「計画に問題があることは明らか。新国立を負の遺産にしないために、日本の建築界の総力を結集して新しい案を作るべきだ」と訴えた。

 建築エコノミストの森山高至氏は同日夜、都内のシンポジウムに出席。「デザインに変更が必要になった場合にデザイン監修者は不合理にこれを拒絶できない」などと定めたデザインコンペの要項を示した上で、「ザハ氏のデザインを大幅に変更しても問題はない」と指摘。「計画には問題が多く、試合はまだ終わりじゃない。ロスタイムを続行させたい」と訴えた。対談した作家の佐山一郎氏は「二千五百二十億円が正式公表されて、もう決まったムードだが、まだどう転ぶか分からない」と話した。

◆命名権うまみ疑問

 新国立競技場の財源確保策の一つに二十九日、命名権(ネーミングライツ)が浮上した。しかし、効果が見えにくいなどの理由から近年、企業からの応募は低調な上、肝心の二〇二〇年東京五輪・パラリンピックの期間中は五輪スポンサー以外の命名権は使えない。「話題にはなるだろうが、企業にうまみはあるのか」。早くも懐疑的な声が上がる。

 命名権は体育、文化施設などにスポンサー企業や商品の名前を付ける権利。施設の整備、運営費を賄う手法として官民問わず取り入れている。

 国内の公共施設で初めて導入した東京スタジアム(東京都調布市)は、二〇〇三年からメーンスタジアムは「味の素スタジアム」に。最初の五年間は十二億円、続く六年間は十四億円、昨年三月からの五年間は十億円の契約を結ぶ。横浜国際総合競技場(横浜市)は〇五年から「日産スタジアム」に。最初の五年は年間四億七千万円の契約だったが、現在は年間一億五千万円に落ち着いている。

 二〇年大会期間中の命名権の扱いもネックになる。大会組織委員会によると、命名権を取り入れている競技会場は大会期間中、大会スポンサーでなければ、企業名の看板が見えないよう覆いをする。大会関連のパンフレットやホームページでは正式名称で紹介するという。

 命名権を研究する鳴門教育大の畠山輝雄准教授は「企業が命名権から撤退したり、契約額が下がったりしている。名前が次々と変わり、定着しない例もある。効果を試算しづらいからだ」と指摘。「新国立競技場でやるとしても、税金で賄う施設である以上、国民の理解を得てからでなければならない」と注文する。

 こうした課題に文科省幹部は「実現するかどうかも含め、よく検討したい」と話している。 (北爪三記)

◆都の建築審査会 建設手続き同意

 新国立競技場について、東京都建築審査会は二十九日、競技場を建てるための用途許可に同意した。建設予定地は、住宅中心の第二種中高層住居専用地域で、本来は競技場が建てられない。

 第二種中高層住居専用地域には、観覧場やスポーツ練習場などを含む競技場は建てられず、建てる場合は建築基準法で建築審査会の同意が必要になる。

 この日は法律や建築、都市計画などの専門家七人が審査にあたった。建築家の寺尾信子氏は「新国立競技場は世界的に議論になっている。これまで市民の意見を十分に聴いたのか」と指摘した上で、「地域に愛され、未来の世代に歓迎されるよう、限られた時間の中でも最大限、市民の意見を吸い上げる努力が必要だ」と要望した。

 

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