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【新国立競技場問題】

新国立工費 業者「3000億円」と試算も JSC「2100億円」と報告

 白紙に戻った二〇二〇年東京五輪・パラリンピックの主会場となる新国立競技場(東京都新宿区)建設計画をめぐり、事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)が今年一〜二月上旬、工事を請け負う予定だったゼネコンから「概算工事費が三千億円を超える」との試算を報告されたものの、文部科学省へはこの試算のほかに二千百億円程度の工費で済むとの算出結果を二月十三日に報告していたことが分かった。

 七日に開かれた第三者による検証委員会の初会合に提出された資料から明らかになった。JSCのコストへの甘い意識とともに、情報公開に対する姿勢も問われそうだ。

 資料によると、二千百億円はJSCと設計会社のJV(共同企業体)がはじき出した工費。建設資材や人件費、消費税率の上昇分も加味されている。

 一方、三千億円超とJSCに報告したのは大成建設と竹中工務店。JSCは、両社が算出したこの工費も文科省に伝え、「乖離(かいり)を収めることは困難」と報告した。この経緯は、およそ二カ月後の四月十日に初めて事務方から下村博文文科相に報告され、下村氏は、計画見直しを訴えてきた建築家の槇(まき)文彦氏と面会するなど再検討を始めたという。

 だが対応は後手に回り、工費は二千五百二十億円に拡大。世論の批判で計画は白紙撤回された。JSCと文科省が二月の段階で計画を精査しなかったために白紙撤回が遅れた可能性があり、検証委でも論点になりそうだ。

 関係者によると、文科省やJSC内では当時、一九年のラグビー・ワールドカップ(W杯)に間に合わせることを優先し、コストへの危機意識は低かった。大成・竹中側からは工期も予定を超えると伝えられており、JSC関係者は「工期オーバーの方がショックは大きかった。極端に言えば工費は政治判断で何とでもなるが、工期は遅れるとW杯が行えなくなる」と話す。

 JSC広報室は「三千億円は大成と竹中が試算した金額。JSCと設計会社が出したのはあくまで二千百億円だった」と説明している。

◆本体だけの予算で「見せかけ」 昨春公表の1625億円

 新国立競技場の工費は計画当初から乱高下し、見積もりの甘さが指摘されてきた。中でも昨年五月の基本設計時に公表された千六百二十五億円は「見せかけの数字」と問題視された。

 政府が三千億円に達するとの試算を公表し世論の批判が起きた二〇一三年十月以後、JSCは床面積を約二割縮小して千七百八十五億円に縮減。一四年五月には安価な資材を活用したなどとして、さらに千六百二十五億円まで減らせたと公表した。

 だが、実際にはこの額は基本設計に入る前の一三年末に決定していた。JSC幹部は「三千億円への批判が強く、少しでも抑える必要があった。千六百二十五億円は政治的に決められた数字」と証言する。

 千六百二十五億円は本体工事費千三百八十八億円に周辺工事費を合算した数字。当時、文科省関係者は「本体工事だけの数字でも、元の予算の千三百億円に近づければ世論の批判も収まるのではという思惑があった」と話した。このころ、JSCの河野一郎理事長は自民党議員に「必ず千六百二十五億円以内に収める。もしオーバーしたら腹を切る」と約束したという。

 千六百二十五億円の妥当性については公表当初から疑問の声が相次いでいた。JSCは試算時に前年七月の単価と、当時の消費税5%という古い条件で計算。建設時に額が増えるのは確実だった。

 河野氏は基本設計時の記者会見で「一体いくらで建設できるのか」との質問に「いま政府とやりとりしている。コメントできない」などとはぐらかした。その後も額を明らかにせず一四年八月には実施設計に着手した。 (森本智之)

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