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【経済 あなた発】独白 金融危機編<1> サブプライム。実は誰も分かってない2009年3月17日
投資関連金融マン(29)景気が深い闇の中に沈んでいる。サブプライムローンという“病原体”が海を越え、変異を重ねながら経済をむしばんでいる。危機の炉心部ともいえる金融にかかわり、振り回された人々の「独白」を、今あらためて聞く。 あの時、売っていたらわが社は大変なことになっていたし、自分も干されてたでしょうね。想像するとぞっとします。 二〇〇六年の秋ごろでした。うちも遅ればせながら、米国のサブプライムローンとか、新しいものを組み込んだ金融商品を作って、国内の銀行に販売しようという話になった。そこで四、五人のチームで検討を始めたんです。 僕は普段、日本の会社の株をいくつか組み合わせて「ナントカ成長株ファンド」みたいな金融商品を作っていたが、サブプライムとか海外の商品を扱うのは初めてでした。 商品化しようと思えば多分、できたとは思う。というのは、自社でノウハウがない商品開発の場合、米国の金融機関から元になる金融商品を買い取って、それを日本の法律やルールに合うように微調整するくらいしか、僕らとしてはやることがないからです。 要するに、コンビニで買ってきたチャーハンを自宅の皿に盛り付けるようなもんです。内容は変わらない。 でも、自分で一から作ったわけじゃないから、僕は怖くてお客さんに売る気になれず、社としても購入を見送った。 あの時、買おうとした金融商品は、ばらばらにしていくと、三千種類くらいのローンから成り立っていた。米国のサブプライムローンを債券にしたものも、個人のクレジットカード支払いを裏付けにしたのもあった。奨学金の返済というのまであった。 でも、こういうのを一つ一つ英語の資料を取り寄せて、ローンの返済期間とか、社債を発行した米国の小さな会社の経営の具合はどうかなど、調べられると思います? チャーハンでいえば、いろいろな具材の成分とか生産履歴とか、着色料の有害性を三千回も調べるようなもんです。ためしに百種類くらいの英語の資料を読んでみたら、一カ月もかかりました。 それで確信しました。サブプライムを組み込んだ金融商品の本当の中身や信頼性なんて、実は誰も分かってないんだって。チャーハンだったら料理人は一人でしょう。でも、この場合は部分ごとに作った人が違いますから、なおさら分からない。 一昨年、サブプライム問題が発生した時、世間は驚いてましたけど、僕らは冷静でしたよ。来るべきものが来たのかなって。 住宅神話崩壊 始まった逆回転不況を招いた元凶ともいえるサブプライム住宅ローンは、なぜ生まれ、どのような経緯で金融マン(29)の手元に届いたのか。共著「サブプライム問題の正しい考え方」がある独協大教授の倉橋透氏と住宅金融支援機構主任研究員の小林正宏氏に解説してもらった。 倉橋 この金融マンはまじめですね。二〇〇六年の時点で、自分でできるだけ調べて、サブプライムを含んだ金融商品の中身を知ろうとしている。それで実際、売買せずに済んでいる。こういう人が世界中の金融機関にもっと多くいたら、今のような危機にはならなかったんですが…。 小林 彼のいうチャーハンの例だと、いろいろ入っている具材のうち、結局サブプライムという具材が腐っていたわけです。では、米国生まれのサブプライムとは何か。 倉橋 米国は移民の国ですよね。世界中から集まってきた人にとって、持ち家を買うのは、まさにアメリカンドリーム。でも、そういう人々の多くは、収入が低かったりして、なかなか家なんて買えない。 小林 でも、そのギャップを埋めた“魔法の杖(つえ)”がサブプライムでした。最大の特徴は、三十年もの返済期間のうち、最初の数年の金利が非常に低かったり、金利だけの返済だけでよかったりすること。貸し手は、民間の住宅金融会社です。 倉橋 最初はよくても、後から返す条件が厳しくなるローンが、なぜ利用されたか。 小林 答えの一つは、米国の住宅価格は戦後一貫して上がり続けてきたという「住宅神話」です。つまり、借り手は、数年後に返済が苦しくなっても、神話が続く以上、最後は自分の家を売れば何とかなる。貸し手にとっても、返済が危うい人のローンを組むのは本来怖いはずですが、いざとなったら家を差し押さえれば元は取れると楽観していた。 倉橋 住宅価格が上がるから無理なローンで家を買う人が増え、だから住宅価格が上がって…。 小林 典型的なバブルだった。そして、〇六年ごろから、返済条件の厳しくなったローンが増え始め、差し押さえられて売りに出される住宅も予想以上に増えました。売り物件が増えることで住宅価格がどんどん下がり、逆回転が始まった。 倉橋 ここまでは、米国でサブプライムという腐った具材が生まれるまでの話です。 小林 問題が世界に広がったのは、サブプライムローンの貸し手だった米国の住宅金融会社が、この腐りかけた具材を、投資銀行と呼ばれる金融機関に売ったのが原因です。 倉橋 投資銀行は、このサブプライムローンを細かく切り刻み世界中に売りました。理由は、こういうことです。「サブプライムローンを返せない人は多いだろう。つまり一部の具材は傷んでいるかもしれない。でも一部は新鮮かもしれない。細かくして株とか債券とか別の具材と混ぜ合わせて新しい商品にしちゃえば、まだ食べられるだろう」。こういう行為を彼らは「証券化によるリスク分散」なんて呼びました。 小林 こうして切り刻んで混ぜ合わせ、また切り刻んで混ぜ合わせ、三千種類の具材や着色料が入った金融商品が世界中にばらまかれ、転売につぐ転売の末、若い金融マンのところまで届いたんです。 <デスクの独白> 新劇役者だった父は所得が低かった。米国ならサブプライム対象者だ。三十数年前、その父にCMの仕事が舞い込んだ。大酒飲みの父が少女とアイスを食べ踊る映像に、家族は驚がくした。だがギャラは頭金の一部となりマイホームの夢が実現した。さて米国の庶民の夢は悪夢に変わり世界に拡散した。「独白」は、人々の肉声を通じ悪夢の真相に迫る試みである。
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