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【経済Q&A】

交渉参加 TPP<3> 医療制度は守れるのか

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 環太平洋連携協定(TPP)への参加問題は、日本の医療制度を揺るがしかねないとの論争に発展している。すべての国民が原則、三割の自己負担で医療を受けられる「国民皆保険制度」をめぐり、政府が必ず守ると強調しているのに対し、反対派は崩壊する恐れがあると主張する。実際はどうなのか。 (金杉貴雄)

 Q TPPに参加すると、医療制度にどんな影響があるとされているのか。

 A 日本医師会など医療四団体や民主党の反対派はTPP交渉に入れば、米国が日本に従来求めてきた「混合診療の全面解禁」や「営利目的病院の医療参入」を要求する可能性があると指摘する。これが国民皆保険制度の崩壊につながりかねないと主張している。

 Q 混合診療が全面解禁されると、なぜ国民皆保険制度が崩壊するのか。

 A 現在、公的保険医療を維持するため、保険適用外の「自由診療」を併用することを原則禁止している。併用した場合は、公的保険部分も一気に100%自己負担になる。これが「混合診療の禁止」だ。

 混合診療が全面解禁された場合、薬や医療機器のメーカーは最新の機材や薬を開発すると、時間のかかる保険認可を待たず、自由診療に提供するようになる。さらに営利目的の病院の参入を認めれば自由診療は確実に増える。そうなると、政府も財政負担を圧縮し、次第に公的保険が適用される範囲が狭くなって、国民皆保険が維持できなくなると、医師会は言っている。

 Q 本当に皆保険制度はなくなるのか。

 A 先進医療に公的保険が適用される動きが止まり、保険外医療のままとなる可能性は否定できない。先進医療は全額自己負担となり、高額の医療費を払える人しか受けられなくなる。国民が平等に低負担で医療を受けられる制度の精神は失われる。

 Q 実際に米国は混合診療の全面解禁を要求してくるのか。

 A 日本の外務省も「議論される可能性はある」と認めている。日本で規制の強い分野として、農業とともに医療保険を例示し「開国」を求める米有力紙もあり、米政府が関心を示しているのは間違いない。

 Q 日本政府はどんな方針で交渉に臨むつもりなのか。

 A 野田佳彦首相は国会答弁で「公的保険制度は断固として守る」と明言している。推進派も「不利益なものは拒否すればいい」と主張し、ほとんどの国民は皆保険制度の崩壊を望んでいない。政府には徹底した情報開示と強い交渉力が求められる。

 Q ほかに医療関係で影響は。

 A 外国に比べて厳しいといわれる日本の新薬承認審査の基準が緩和され、安全性がおろそかになるともいわれている。厚生行政に詳しい民主党議員は「国民皆保険よりも、問題なのはむしろ薬ではないか」と指摘している。

 

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