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【経済Q&A】

TPP交渉の焦点「ISD条項」 海外投資トラブル回避

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 安倍政権が近く参加表明するTPP(環太平洋連携協定)は「ヒト・モノ・カネ」の行き来を活発にするため、関税の引き下げに加えて企業の投資や知的財産の保護などのルールづくりも協議している。中でも参加国の交渉では「ISD条項」の扱いが焦点となっていて、日本国内でも注目度が高まっている。どんな仕組みなのか。 (岸本拓也)

 Q ISD条項って何。

 A 英語の「Investor(投資家) State(国家) Dispute(紛争) Settlement(解決)」の頭文字の略称で、「国家と投資家の間の紛争解決」という意味になる。要するに企業などの投資家を保護するためのルールだ。

 具体的には外国企業が投資先の国の対応によって損害を受けた場合、国連の仲裁機関などを通じてその国を訴えることができる。

 制度が利用されるケースで想定されるのは、日本企業が新興国で建てた工場などに対し、その国が急に法律を変えて没収(国有化)する場合など。企業はその国に対し賠償金を求めることができる。

 Q 外資企業が差別されないための仕組みなのかな。

 A ISDがないと企業は投資先の国で不利益を被っても「泣き寝入り」の恐れがある。だから日本が経済連携協定(EPA)や投資協定を結んだ二十四カ国との間にはISDがある。例外はフィリピンとのEPAだけだ。これまで日本政府が訴えられた例はないが、世界各国での訴訟件数は二〇一一年末時点で四百五十件に上る。

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 Q そのISDが、なぜTPPでは問題視されるの。

 A 訴訟大国の米国の存在が大きい。日本の「TPP反対派」は「米国企業が、日本政府を次々と訴えるのでは」と心配している。「訴訟乱発によって日本独自の厳しい環境規制や食品安全規制が脅かされる」との見方もあり、ISDを「米国の毒まんじゅう」と批判する有識者もいるよ。

 Q 心配しすぎでは。

 A 「反対派」は米国と北米自由貿易協定(NAFTA)を結ぶカナダ、メキシコの例を挙げている。これまでにISDを使って四十六件の提訴があったが三十件が米国企業が原告。中には米国企業がカナダとメキシコから多額の賠償金を勝ち取った例がいくつかあった。逆に米国政府が負けた訴訟はなく「ISDは米国優位」と指摘されている。ただ、米国企業の敗訴は十一件あり一概に米国有利の仕組みとも言えない。

 Q TPPでのISDの交渉はどうなっているの。

 A 豪州はTPPにISDを盛り込むことに反対しまだ決着していない。安倍晋三首相は「国の主権を損なうようなISDは合意しない」と主張しているが、日本が交渉に参加した場合、主張がどこまで通るかは見通せないのが現実だ。

 

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